韓国のウェブコミックサービスが日本の漫画市場を70%支配・・・してるわけがない話

アニメ・漫画
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普通の日本人なら一目見ただけでツッコミどころが満載だと気付くのですが、ここ最近、韓国系の海外の反応サイトで何度となく『韓国のKウェブ漫画が日本の漫画市場を70%支配した』という話題を目にします。
日本の漫画界の現状を考えて、韓国のウェブ漫画が70%も進出しているとは到底思えません。
というわけで、この話題についていろいろ調べてみると、やっぱりツッコミどころが多かったようです。

まず、この話の元になっているニュースは、今年の7月13日に韓国の大手新聞社『中央日報』で書かれた以下のニュースです。

韓経:Kウェブトゥーン「漫画王国」日本を手中に…NAVER・カカオの韓国勢がトップ争い(1)
中央日報 - 韓国の最新ニュースを日本語でサービスします

このニュースから一部を引用します。

Kウェブトゥーンプラットフォームが日本デジタル漫画市場で売上基準70%のシェアを占めたことが分かった。NAVERのLINEマンガが38%、カカオのピッコマが28%、NHNのコミコが4%の占有率を示した。

韓経:Kウェブトゥーン「漫画王国」日本を手中に…NAVER・カカオの韓国勢がトップ争い(1)– 中央日報

ウェブトゥーンとは韓国発祥のウェブコミックサービスで、スマートフォンで読みやすい縦長のコマ割りで描かれスクロールして読むことができます。
絵は基本的にカラーであるなどといった特徴もあります。
縦スクロール前提で描かれているので、紙媒体で出版されることもありません。

この話題における1つ目のツッコミどころは、LINEマンガを韓国企業のNEVER傘下として扱っている点です。
LINEマンガを運営するLINE Digital Frontierは、元々はLINE株式会社が70%、NAVER WEBTOON Corporationが30%株式を持つ韓国色の強い会社でしたが、今年の5月27日にLINE Digital FrontierとNAVER WEBTOON CorporationがまとめてWebtoon Entertainment Inc.というアメリカの企業に譲渡され、そのWebtoon Entertainment Inc.の株をLINE株式会社33.4%持つ形へと組織変更が成されています。
そしてLINE株式会社は、韓国のNAVERと日本のソフトバンクの合弁会社傘下になることが決まり、現在その準備が着々と進んでいます。
何が何やらよく分からないと思いますが、早い話が現在のLINEマンガは全く韓国の会社ではないということです。
つまり、この時点で既に日本のデジタル漫画市場を韓国企業が70%という話に信憑性はまるでないわけです。

更に日本は各出版社が独自のウェブコミックサービスを持っているのですが、上記した報道にある“日本デジタル漫画市場で売上基準70%のシェア”という話にこの部分は含まれていない模様です。
集英社にはダウンロード数1700万以上を誇る『少年ジャンプ+』がありますし、その他の著名な漫画雑誌も独自のウェブコミックサービスを持っています。
これらサービスの実質利用者数は

少年ジャンプ+(少年ジャンプ):約250万
マガポケ(少年マガジン系):約120万
マンガワン(サンデー系):約160万
マンガPark(アニマル系):約80万

と、かなりの利用者数を誇っており、この内、少年ジャンプ+が月980円で提供している『週刊少年ジャンプ』をネット上で読めるサービスを仮に100万人が加入していたとすれば、980円✕12ヶ月✕100万人で年間117億6000万円の売り上げとなります。
LINEマンガの2019年の売り上げが249億円だそうですから、日本の出版社系ウェブコミックサービスの売り上げを加えるだけでも、韓国企業のシェア70%という話は崩れ去るのです。
これに普通に販売される電子書籍や紙媒体の書籍もあるので、韓国が日本の漫画業界を支配するようなことは当然あり得ず、その影響など微々たるものと想定されます。

そもそも日本の漫画市場は、2019年の推定値で4980億円、内2593億円が電子書籍と言われていますが、LINEマンガの売り上げから推察するに韓国ウェブコミックサービスの日本国内の売り上げは『ピッコマ』と『コミコ』を合わせてせいぜい200億円程度、仮にLINEマンガを加えても500億弱にしかならないと思われます。
この状況を見て、何をもって“日本デジタル漫画市場で売上基準70%のシェア”と主張しているのかさっぱり分かりません。

そしてもっと大事なことは、漫画業界の主体が漫画を描く漫画家や各出版社に属する編集者にあるということです。
LINEマンガにしても人気作品は日本の漫画で、韓国の漫画が人気というわけではありません。
所詮、韓国企業が行っていることは漫画事業ではなく、1つのインターネットサービスに過ぎないわけです。

漫画というものは、予想以上に長年の積み重ねにより発展するもので一朝一夕で文化が構築されるものではありません。
なぜなら、漫画の発展には読む側の『漫画読解力』が不可欠なのです。
近年の漫画はコマ割り吹き出しなどいった技術が複雑化し、読む側の力量も相当必要になってきています。
例えば人気漫画『ONE PIECE』では、現在の話の場合は背景が白、過去の話の場合は背景が黒と分かれていますが、これは描く側と読む側の信頼関係があってこそ説明なしで成り立ちます。
おそらく戦前の子供に今の漫画を読ませても、どこから読んでいいのかすら分からず、まともに読み進めることは不可能でしょう。
現在日本における漫画の発展は、戦後間もない漫画黎明期から続く漫画家の独創的な発想と読み手の読解力向上の積み重ねで成り立っているのであって、昨日今日のIT企業が小手先で覆せるようなレベルではないのです。

以上、日本の一大文化とまで発展した漫画やアニメに関しては、たとえどの国であってもそう簡単に超えることは出来ないと思われます。

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