海外の反応サイトを見ていると、昔の日本の美術(絵画)は西洋の美術に比べだいぶ遅れていたという意見をよく目にします。
そしてその対象として、18世紀後期の絵を紹介されることが多いのですが、このことは日本人としてかなりの違和感を感じる話だと言わざるを得ません。
では、以下で紹介する同時代の2つの絵をご覧ください。

エリザベート・ヴィジェ=ルブランの『薔薇を持つマリー・アントワネット』(1783年作)

東洲斎写楽の『三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛』(1794年作)
確かにこの2つの絵を見れば、西洋美術のほうが優れているという感想を持つ人が多いかもしれません。
しかしそもそも論として、上記で紹介した写楽の浮世絵は版画です。
何枚も同じ絵を刷ることができ、蕎麦1杯と同じ値段で売られていた版画と、庶民が目にすることもできなかった一枚絵の油絵と比べるのは、あまりにも無理があるのではないでしょうか?
日本の木工細工が西洋に比べかなり発展していることは皆さんもご存知でしょうが、木版画もその例に漏れず、江戸時代後期にとても発展した産業となっていました。
特に特徴的だったのが色彩豊かな『多色摺り版画』で、この版画は『浮世絵』と呼ばれ、
喜多川歌麿(1753年~1806年)
葛飾北斎(1760年~1849年)
東洲斎写楽(生没年不詳)
歌川広重(1797年~1858年)
などの著名な浮世絵師を輩出することとなります。(浮世絵の全てが版画なわけではありませんが、大多数は版画である)
西洋ではカラーの版画があまり発展していなかったため、西洋人は日本の版画をあまり理解できないのか、あり得ないことに版画と油絵を同じ絵画として評価してしまっているのです。
当然、西洋の美術専門家は日本の浮世絵を理解しており、だからこそ、その後の時代に台頭したフィンセント・ファン・ゴッホ(1853~1890年)やクロード・モネ(1840年~1926年)は浮世絵を評価していたのでしょう。
確かに一枚絵として西洋美術が日本美術より優れていたことは事実かもしれませんが、木工細工の技術を伴う『多色摺り版画』は独自発展した日本の文化であり、これはこれで素晴らしい美術であると私は思います。
ということで、最後に著名な浮世絵(版画)を紹介して終わりにしたいと思います。

喜多川歌麿の『姿見七人化粧 鬢直し』(1790年から1795年頃作)

葛飾北斎の『神奈川沖波裏』(1831年から1833年頃作)

歌川国芳の『相馬の古内裏』(1845年から1846年頃作)

歌川広重の『大はしあたけの夕立』(1857年作)
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