2016年7月10日、初の18歳選挙、改憲勢力の確保なるかなど、何かと注目を浴びた参議院選挙の投票日に日本中が湧く中、それ以上に熱い戦いが東京都練馬区の呉服店で人知れず行われておりました。
それが『第4回白瀧杯 女流かるた高校選手権大会』の3回戦で行われた
矢野杏奈–西牧真凛
の戦いです。
今から書くことは、近年人気の『競技かるた』についての話題です。
競技かるたとは競技化された百人一首かるたのことで、アニメ化や実写映画化もされた人気少女漫画『ちはやふる』の影響により、若い女性を中心に近年とても人気のある競技となっています。
普段このブログを見ている人にとって競技かるたのことはほとんど理解できないかもしれませんが、この戦いはこの場で取り上げるに値する名勝負だったので、敢えてここに記したいと思います。
・競技かるたは、自陣にある25枚の札を早くなくした(早く取りきった)ほうが勝ちとなるかるたゲームです。
・文章内に出てくる分かりづらいかるた用語は、補足説明&リンクを張ります。
・詳しいルールについてはこちらをご覧ください。
まず、私は競技かるたの経験者でもありませんし、競技かるたに特別詳しい訳でもありません。
ただし、白瀧杯はニコニコ生放送での中継があり、また一昨年からは将棋棋士がゲスト出演することが定番化しているため、将棋好きの私も毎年注目しています。(将棋には白瀧あゆみ杯という非公式戦の大会もあり、会場でもある白瀧呉服店は将棋ファンにとってもとても馴染み深い)
また、そもそも私は日本の伝統文化に対し興味がある人間なので、この大会はかるたという文化を知る良い機会となっています。
白瀧杯は女子高校生が和服を着て戦う競技かるたの大会で、段位の高い順(同じ段位の場合は昇段の早い順)に選抜された32名によって行われます。
『ちはやふる』が連載されたのが2008年から、最初のアニメ化が2011年から2012年にかけてだったことを考えると、今大会に出場する選手たちは『ちはやふる世代』のど真ん中と言えるでしょう。
そしてその3回戦で行われた矢野杏奈-西牧真凛の戦いが、まるで漫画のような凄い展開で、正に『リアルちはやふる』だったのです。
まずは、この戦いを行った2人を紹介します。
矢野杏奈
日本女子大学付属高校2年
1999年11月12日生まれ
東京都出身
※高校は神奈川県
西牧真凛
福島県立安積黎明高等学校2年
1999年11月30日生まれ
福島県出身
矢野杏奈さんは、昨年この大会を1年生で制した優勝候補最有力選手で、第1シードに選ばれています。
また今大会唯一の五段の段位を所持し、最近では大人も参加する全国のかるた大会に出向き好成績をあげている現在もっとも注目される女子高生かるた選手です。
対する西牧真凛さんは、昨年の年度末に行われた『第45回全国小・中学生かるた選手権 中学3年生の部』で優勝した強豪選手で、第4シードに選ばれています。
西牧さんは家族がかるた一家なのか、かるた大会の成績表を見ると同じ地域で“西牧”の苗字を持つ選手を多数目にします。(少なくとも西牧由起 西牧愛美 西牧真凛 西牧美渚の4人の選手が確認できる)
この2人は一昨年行われた『第44回全国小・中学生かるた選手権 中学2年の部』の決勝戦でも戦い、そのときは矢野杏奈さんが勝利し見事優勝しました。
また、昨年行われた『第38回 全国高等学校小倉百人一首かるた選手権大会』の団体戦では、奇しくも1回戦での対局となり、このときは西牧真凛さんが所属する安積黎明高校が勝利しました。(西牧さんは同大会の個人戦でも4位に入った。※競技かるた大会の4位は基本的にベスト8のことである)
学年が同じで誕生日も近いこのライバル2人の戦いは、現在における高校生女流競技かるた選手の最高峰の戦いであることは間違いありません。
※ちなみに、この2人は住んでいる地域は違いますが、小さいころからかるたを通じての交流があり、お互いの誕生日を祝い合うような仲の良い友達だそうです。
さて、勝負の方は中盤まで西牧選手先行し、昨年の覇者である矢野選手が苦戦します。
矢野選手は第1シードですが、2人の直接対決は3-1で西牧選手が勝ち越しているようなので、ここまでの勝負結果はむしろ順当なのかもしれません。
勝負は進み、矢野選手8枚vs西牧選手5枚という終盤戦に突入した場面で、2人は取り札について揉めます。
※かるたは基本的に審判がいないセルフジャッジ方式なので、時折揉めることがある。
このときはちょうど審判が付いていたのでジャッジを委ねたところ、西牧選手が札を取ったとの判断。
実は2人は序盤にも揉めていて、そのときも西牧選手に有利なジャッジとなっていました。
矢野選手はこのジャッジでペースを乱したのか、6枚vs4枚の場面でお手つきしてしまいます。
※お手つきは相手の札をもらうことになる。
その結果、矢野選手は7枚vs2枚の圧倒的不利の状況で終盤戦を戦うこととなりました。(相手が札を取っていたため一気に3枚差が開く)
7枚vs2枚の状況で、矢野選手は相手陣の札を取りますが、自陣から相手陣に送る札をかなり迷います。
結局1度送り掛けた札を戻し、別の札を送りました。
※相手陣の札を取ったときは自陣の札を相手陣に送る。
その後お互い1枚ずつ札を取り5枚vs1枚となり、西牧選手は自陣の1枚を取れば勝ちという圧倒的有利な状況に!
更に空札もなくなり、これから読まれる札は全て取りになります。
※競技かるたで使う札は100枚中50枚なので、残りの50枚は読まれても取り札のない空札となります。
西牧選手は、自陣の札を1枚取れば勝ちなので当然自陣の札が読まれることを待ちます。
しかし、そこから4枚連続矢野選手側の札が読まれ、全て矢野選手が札を獲得!!
ついに1枚vs1枚の運命戦に突入してしまったのです。
※1枚vs1枚の戦いは運命戦と呼ばれ、自陣の札を読まれた側がほぼ間違いなく勝つ運要素が高い戦いになる。
そこで読まれた最後の札は・・・
矢野選手側の札でした。
そして最後まで読まれなかった札は、なんと矢野選手が迷いに迷って相手陣に送った1枚だったのです。
このような漫画並みの展開で、矢野選手が奇跡の大逆転勝ちとなりました。
↓矢野選手が勝利した瞬間の画像
恐らく、この2人の激闘を見たほとんどの人がこの試合は漫画を超えていると思ったことでしょう。
空札を除き、自陣の札が5回連続で読まれる確率は3.125%です。←この状況で矢野選手の札が5回連続で読まれる確率は16.67%でした。
その確率が最終場面で出たことと、最後まで読まれなかった札が悩みに悩んで送られた札だったことは、奇跡を超えた“何か”を感じます。
いずれにせよ、今後の女流競技かるた界を引っ張っていくであろうライバル2人の戦いは、感動に値する名勝負でした。
この激闘を行った2人には、素直に拍手を送りたいと思います。
その後、勢いに乗った矢野杏奈さんは、準決勝ではるばる福岡から来た第2シードの平川彩波さんを下し、決勝では3年生の堀井萌子さんに対し2枚vs1枚の劣勢から1枚vs1枚に追いつき、またまた運任せの運命戦に突入!
その運命戦も制し見事連覇となりました。
昨年この大会を1年生で制したときも、矢野杏奈さんは何かを“持っている”感がありました。
競技において何かを持っていると感じさせる選手は多いですが、彼女もその類の選手と言えます。
漫画で言えば、彼女は確実に主人公です。
ハッキリ言ってしまえば、顔が完全に主人公なのです!!
漫画『ちはやふる』は実写映画化されましたが、変に役者が演じるより、彼女たちの熱い戦いを普通に中継したほうがよっぽど多くの人に感動を与えられるような気もします。
そして今後、矢野杏奈さんが女流かるた選手の最高峰であるクィーンの座につくようなことがあれば、それはもう漫画を超えた存在になるのかもしれません。
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