今、時代が求めるものは陰キャによる陰キャの音楽か?

芸能
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別ブログで、昨年末から今年にかけて流行したAdoさんが歌う『うっせぇわ』を初めて聴いた感想を書きましたが、YouTubeで『うっせぇわ』や他のAdoさんの楽曲を聴いていたら、おすすめ動画に似たような楽曲が多数出てきました。
後にそれはボカロPの楽曲だとわかり、興味を持ち色々と聴いてみることにしました。
今回は、そんなボカロPの音楽について考えていきたいと思います。

Adoさんが『うっせぇわ』を発表したのは、高校3年生の17歳のときです。
アイドル以外の純粋な歌手として17歳のデビューはとても早い部類に入り、過去にもあまり成功例がありません。
こういった若い歌手の登場に対し、一定の年齢以上の人は15歳(高校1年の学年)で衝撃的なデビューを飾った宇多田ヒカルさんを思い出したのではないでしょうか?
この2人にある1番の違いは、Adoさんは楽曲の提供を受ける歌手で、宇多田ヒカルさんは自身で作詞作曲をするシンガーソングライターであるという点だと思っていたのですが・・・
本当のAdoさんと宇多田ヒカルさんの違いは、歌っている歌の内容にあるのかもしれません。
具体的に言うと、歌詞に社会性があるかないということです。
『うっせぇわ』には明らかに社会性があり、それ以降もAdoさんが歌う歌には社会性があるものが多くなっています。
一方、宇多田ヒカルさんは『Automatic』にしても『First Love』にしても内容は分かりやすいラブソングでした。

これが、今回のテーマであるボカロPと陽キャ・陰キャという話に繋がっていきます。
今までの音楽は、陽キャという陽気な思考や発想をする人で作られる傾向が極めて強いものでした。
なにせ人前に出なくては歌手にはなれず自分の作品が発表することすら難しかったわけですから、音楽業界(芸能系の音楽業界)に属する人は陽キャが多くなるのは必然です。

しかし今は動画サイトが発展したことで、誰でも簡単に自分の歌唱力を披露し上手く行けばお金を稼ぐこともできます。
更にボーカロイド(ボカロ)という音声合成ソフトの登場により、歌唱者の必要すらなく楽曲制作者は自分の作品を発表できるようになりました。
つまり、ボカロを扱う人は1人で音楽活動を完結させることが可能で、一切、表舞台に出る必要もないのです。
これは陰キャ(陰気な性格な人)の極みと言えます。
また、1人で音楽活動を完結できるということは若い内に音楽家として活動を開始できるということにも繋がり、陰キャを貫き通しやすい環境が整っていると言えるのかもしれません。

世の中の人を陽キャ・陰キャと単純に二分化は本来できませんが、ここではあえて陽キャ・陰キャに分けて考えていきます。

このボカロというものはオタク文化が渦巻いていた初期のニコニコ動画から波及したものですが、オタクの語源は『お宅』で、家からあまり出ずに趣味を楽しむ人のことを言い陰キャともかなりの部分で意味が重なっています。
そして、このボカロを扱う(または扱っていた)楽曲制作者たちのことをボカロP(ボーカロイドプロデューサー)と呼ぶわけです。
そんなボカロPには様々の共通した特徴があります。(丸サ進行とか音楽的なことは私はわからないので他の部分を説明します)
ボカロPの楽曲は基本的に動画サイトで楽曲を発表するわけですが、この際の動画は同じニコニコ動画の文化でもある絵師という絵をネットで発表している人から数枚の絵を提供してもらい、それに動き与えながら歌詞を様々な手法を使い特徴的に表示させる動画が大半を占めています。
これらの加工は、いずれもパソコン上で比較的簡単にできるもので、一般的な楽曲のミュージックビデオとは一目で違いが分かるほどの特徴的なものです。
ボカロPがユニットを組んだり楽曲を提供する場合は、一般的な歌手よりも『歌い手』と呼ばれる既存の歌をネット上で歌っている同じくニコニコ動画発祥のアマチュア歌手を採用することが多くなっています。(Adoさんも歌い手出身)
以上のようにボカロPの音楽は全てがニコニコ文化から生まれた陰キャ要素の高いもので、ネットやパソコンだけで活動を完結させる傾向が極めて強いと言えます。
実際にAdoさんは『うっせぇわ』の楽曲提供者であるsyudouさんには会ったことも電話で話したこともなく、歌の収録も1人で行ったそうです。

このような陰キャ属性のボカロPが、社会に対する不満や不平を溜め込みやすいことは想像に難しくありません。
そのためボカロPが作った歌には、当然、社会性帯びてきます。
そういった意味でAdoさんの存在は、宇多田ヒカルさんと言うよりも社会に対する若者の不平や不満を歌った尾崎豊さんなどに近いのかもしれません。(Adoさんは作詞作曲していないが)
しかし、ボカロPが作った歌に出てくる登場人物はバイクを盗んだり校舎のガラスを割ったりはしないのです。
なぜならボカロPの歌に登場する人も陰キャだからです。
『うっせぇわ』にしても、心の中で思っているだけで実際には誰に対しても『うっせぇわ』なんて言っていないものと思われます。
このように、ボカロPの楽曲とは陰キャによる陰キャの楽曲と言えます。

では、ここで少しボカロPが作った楽曲の登場人物が陰キャである例を示しましょう。

俯いたまま大人になった

引用:『ただ君に晴れ』 作詞作曲:n-buna、歌:ヨルシカ

ヨルシカはYouTubeで1億再生になる動画が3つある人気のボカロP系ユニットで、陰キャ臭漂う歌詞の歌が多くなっています。

騒がしい日々に笑えない君

引用:『夜に駆ける』 作詞作曲:Ayase、歌:YOASOBI

YOASOBIはデビュー曲の『夜に駆ける』が話題となり、昨年はNHK紅白歌合戦にも出場した注目度の高いボカロP系ユニットです。
YOASOBI(楽曲制作者Ayase)はあまり陰キャではなく、また楽曲も小説をもとに作るという独自のスタイルなのですが、やはり歌詞の中には陰キャの匂いを感じます。

今日もまた己の醜悪さに惑う

引用:『ギラギラ』 作詞作曲:てにをは、歌:Ado

こちらはAdoさんの3曲目のシングル楽曲です。
Adoさんは自身で作詞作曲していませんが、過去に発表した楽曲は全てボカロPから楽曲提供を受けており、陰キャが出てくるような歌を歌う機会が多くなっています。

以上のように、ボカロPが作った楽曲は今まで数多く作られてきた惚れた腫れたの歌とは一線を画しています。

現在、ボカロPの楽曲が流行っている状況は、音楽業界が陰キャの存在をあまり重視してこなかった反動かもしれません。
ただし2010年代に大人数アイドルを多数プロデュースした秋元康さんなどは、ある程度陰キャの存在も考慮していたように思います。
2013年に発売された乃木坂46の『君の名は希望』などは、周りから透明人間と呼ばれている陰キャと思われる人物が主人公となっています。
しかし最終的には前を向いて歩こう的な歌詞で、結局は陰キャを否定しているわけです。

一方、ボカロPの歌に出てくる陰キャは陰キャを貫いています。
ヨルシカの『だから僕は音楽を辞めた』は、タイトルの通りそのまま音楽を辞めてしまいますし、YOASOBIの『夜を駆ける』は結局2人揃ってフェンスの向こう側に行ってしまう歌です。
Adoさんの『夜のピエロ』(楽曲提供者:biz)は、ひたすらに夜に沈んでいます。
以上のように、ボカロPの歌は陰キャが陰キャのままであり続けている楽曲が多くなっています。
今はLGBTはもちろん万引をする元マラソン選手すらも病気という名目で認められる時代ですから、陰キャぐらいのことで否定なんてしていられないのかもしれません。
自分はAdoさんの4曲目の楽曲『踊』がイマイチだと感じていたのですが、当初、その理由を最近のK-POPに曲調が似すぎているからだと思っていました。
しかし実際は、『うっせぇわ』や『ギラギラ』で感じたAdoさんの陰キャ臭との間に大きなギャップがあったからのような気もします。(Adoさん自身も『踊』は最大限に陽キャを演じた歌と語っている)

実は、このような陰キャの歌が日本で流行ったのは今回が初めてではありません。
1970年代の日本では、フォークソングやニューミュージックという陰キャに近い暗い歌が流行った時代がありました。
これらジャンルの歌手はテレビへの出演を拒否するなど、現在のメディアに出演しないボカロP系アーティストとの共通点もあります。
しかし実際にテレビに出ないことを宣言した吉田拓郎や松山千春は完全な陽キャで、現在のボカロPほど陰キャに徹しきれていなかったように感じます。
中には山崎ハコさんや森田童子さんなどといった極めて陰キャと感じる人も存在していましたが、それでもライブ活動をするなど最低限は人前に出て音楽活動をしていました。

一方のボカロP系アーティストは、Adoさんも上記したヨルシカにしても顔を一切出さずに活動しています。
『春を告げる』というヒット曲があるボカロP系アーティストのyamaさんは、メディア出演することはあるもののアイマスクをして年齢はおろか性別すらも不明のアーティストとして活動していますし、ボカロP出身として知られる米津玄師さんも完全な顔出しはせずにメディアへの登場は極めて限定的です。
Adoさんに至っては、自身のことを陰キャでメンヘラと発言しています。
以上のように、ボカロPやボカロPに楽曲提供を受けるアーティストは陰キャ属性が高く、楽曲も陰キャに関する歌がとても多くなっているわけです。

最後に、このボカロPが一般層にまでウケた過程について考えます。
まず第一に、ボカロ曲として有名な『千本桜』が徐々に一般層にも浸透し、最終的にはカラオケランキングで1位を獲得するほど広く知られた影響が大きいと言えるでしょう。
更に日本のトップアーティストとなった米津玄師さんの成功を見て、陽キャの音楽関係者もボカロPのことを放っておけない存在として認識したのだと思います。
その後は、ヨルシカ、YOASOBI、yamaなどといったボカロP系の楽曲が次々とYouTubで1億再生を超え、そして昨年にAdoさんの『うっせぇわ』は大きな話題となり、現在は更なる注目を集めているようです。

以前に私は、2020年代はアイドル文化が廃れ別の音楽が流行するのではないかとの記事を書きましたが、現在はアイドルという根本的な陽キャの時代からボカロPという陰キャの時代へと音楽の流行は移っているのかもしれません。

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以上、現在流行しているボカロPについて『陰キャ』というキーワードから考えてみました。

ちなみにAdoさん曰く、本当の陽キャは陽キャと陰キャという分け方をしないそうです。(;^_^A

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