奨励会三段リーグのレベルが上がりすぎている問題と奨励会三段棋士の救済措置

頭脳系競技
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昨今、将棋のプロ棋士である藤井聡太六段が、最多連勝記録である29連勝や中学生で初めての棋戦優勝をして大きな話題となっています。
そんな藤井聡太六段は、現在、今年度の勝率ランキングで堂々の1位です。
このことは、テレビなどで報じられる機会も多いため知っている人は多いかもしれませんが、実は藤井聡太六段と同時にプロになった大橋貴洸四段もすごい勢いで勝利を重ねており、今年度の勝率ランキングは、3月11日現在、藤井聡太六段に次いで2位につけています。(藤井聡太六段は59勝11敗で勝率0.843、大橋貴洸四段は41勝11敗で勝率0.788)

このプロ棋士になって1年半の2人が続ける快進撃の裏には、将棋界にまつわるある大きな問題が隠されています。

まず、将棋のプロ制度について簡単に説明します。
将棋でプロになるには、奨励会という育成機関に入会しないとならないのですが、この奨励会に入る時点でアマ四段程度の実力が必要であり、既に地元じゃ負け知らずの実力者となっています。
この実力者たちが基本的に6級としてスタートし、好成績をあげるごとに昇級・昇段、そして三段に上がると三段リーグという奨励会三段棋士しかいないリーグ戦に参加することになります。

三段リーグは半年単位で行われ(全18戦)、最終的にこのリーグ戦の上位2人がプロ棋士(四段)になれるのです。
また三段リーグで3位を2回とった人は、将棋棋士にとっての主要棋戦である順位戦に参加できないフリークラス棋士としてプロ棋士(四段)になることができ、好成績をあげると順位戦に参加できる仕組みになっています。
前記したプロ棋士になって1年半の藤井聡太六段と大橋貴洸四段が勝率1位・2位を独占するということは、奨励会の三段リーグのレベル(奨励会三段棋士の実力)が上がりすぎていることを意味しています。

藤井聡太六段は三段リーグを1期抜けしたのあまり参考になりませんが、大橋貴洸四段は三段リーグ12期も在籍しており、三段リーグ在籍時よりもプロ棋士になった後のほうが好成績を上げているのです。
プロ棋士の実力を示すレーティングを10年以上も前から計算して発表しているサイトを見ると、三段リーグの上位陣はプロ棋士の1/3から半分よりも実力が上という状況となっているそうで、下位のプロ棋士よりもプロになれない奨励会の三段棋士のほうが実力は確実に上なのです。
これは、実力主義であるプロ制度として問題があると言わざるを得ません。

更に言えば、藤井聡太六段と大橋貴洸四段にプラスして、2人の半年前にプロになった都成竜馬四段と佐々木大地四段の4人は、順位戦の最高リーグであるA級リーグに在籍しているの屋敷伸之九段(今期陥落)以上のレーティングになっているのです。(藤井聡太六段より後にプロ棋士になった棋士は、対局数が少なくまだレーティングが安定していない)
プロになってすぐの棋士が、棋界最高峰と言われるA級棋士(順位戦A級リーグ在籍棋士)のレーティングをも超えてしまうということは、近年の三段リーグのレベルが異常なまでに高くなっている証拠と言えます。
今期の三段リーグは36人が参加していますが、この中で上位2人に入ることは、おそらくA級棋士ですら簡単なことではないでしょう。

この三段リーグおよび奨励会員のレベルが上がりすぎている問題は昔からあるのですが、さすがに近年は看過できないレベルにまで達しています。
何も将棋一辺倒で生きてきた40代や50代の既存のプロ棋士たちをどんどん引退させろとはとは言いませんが、近年の三段リーグのレベルが上がりすぎているのは火を見るよりも明らかなのですから、奨励会三段棋士に対する何らかの救済措置は必要かと思います。
ということで、私がこの奨励会三段棋士の救済措置を考えてみました。

まず、三段リーグで3位を2回でフリークラス棋士としてプロ入りできる規定を変更し、順位戦参加可能な通常の棋士として扱います。
上記した佐々木大地四段はフリークラスとしてプロ棋士になりましたが、プロ入り2年でレーティング的にA級棋士に並んでいるのですから(3月11日現在、屋敷伸之九段と佐々木大地四段は同レーティング)、三段リーグで3位を2回とった時点で、即順位戦に参加可能な棋士として扱うべきでしょう。

また、奨励会の三段棋士は一部のプロ棋戦に出場することができ、この棋戦で優勝すれば三段リーグの3位と同じ次点を獲得できるのですが、この規定も改め、プロ棋戦で優勝した奨励会員はその時点でプロ棋士として扱います。
タイトル戦への挑戦を決めた場合も同じです。
これは、奨励会三段棋士と同様に棋戦参加できる女流棋士やアマチュア棋士にも当てはめ、奨励会を退会した棋士への救済にも繋げます。(奨励会には年齢による退会規定がある)
※実際に都成竜馬四段(当時奨励会三段)と稲葉聡アマがプロ棋戦優勝をしている。

更に、アマチュア主要棋戦の優勝者や上位成績者にはプロ棋戦に参加できる規定が一部にあり、アマチュア棋士がプロ棋士に対して10勝以上かつ勝率6割5分以上(自分の都合の良いところで見た勝率)の成績を残すと、プロ編入試験というものを受けることができます。
この試験は受験料50万+消費税を払い、最後の関門として新しく棋士になった5人と戦い勝ち越せなければならないのですが、この最後の関門は廃止します。
現在の規定では、プロ棋士に10勝以上かつ勝率6割5分以上というのはかなり難しく、この成績を超えた人は直ぐにプロ棋士にしていいかと思います。
実際この制度ができた2006年以降、規定をクリアしたアマチュア棋士は3人しかおらず、試験を受けたのは1人のみなのですから、余計な試験はなくして、奨励会を退会した人も含めてプロ棋士に対して高い勝率を誇るような人はどんどんプロにするべきでしょう。
以上が、私が考えた奨励会三段棋士の救済処置となります。

正直、この程度では奨励会三段棋士の救済措置としては不十分なのですが、プロ棋士が増えすぎると財政的な問題がでてくるため、そういった部分も考慮しての最低限度な措置となります。
逆に言えば、これぐらいの措置は行わないと、現在の将棋棋士が将棋の強い人の集まりであるという担保がとれないと思います。
以上、一将棋ファンとして日本将棋連盟に提言いたします。

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