里見香奈女流の棋士編入試験から見える将棋界の問題点

頭脳系競技
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棋士編入試験の資格を得た里見香奈女流四冠の動向が、将棋ファンの間で話題になっています。

将棋のプロには、男女を問わないプロ棋士(以下、プロ棋士という名前で統一)と女性に限った女流棋士(以下、女流棋士という名前で統一)の2種類があり、一般のプロ棋士になった女性は今まで1人も存在していません。
プロ棋士になるには、奨励会という将棋の実力者を集めた養成機関で勝ち抜かなければならないのですが、例外としてプロ棋士に対し好成績をあげた者に対し棋士編入試験という制度が設けられています。(アマチュア棋士が参加できる棋戦もあるためアマチュア棋士とプロ棋士が戦う機会がある)

↓棋士編入試験については、以前にも記事にしています。

奨励会三段リーグのレベルが上がりすぎている問題と奨励会三段棋士の救済措置
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プロ棋士は、対局する前に対局相手の棋譜などを調べて対策を立てたり作戦を練ったりの準備を念入りに行うなど、表には現れない活動時間が長時間あります。
また対局は朝10時から深夜にまで及び、その後の感想戦も合わせると日を跨ぐことも珍しくありません。
このように、プロ棋士は1回の対局でもかなりの用力を使い、生活リズムもかなり崩され戻すのに数日かかることもあるそうです。
そのため年間の対局数は多くても50局程度となっており、2021年の対局数は、プロ棋士では藤井聡太五冠の64局、女流棋士では伊藤沙恵女流名人の53局が最高記録となっています。
里見香奈女流四冠は女流棋戦50局と、女流棋士に与えられる一般棋戦枠で17局対局しているため、既にプロ棋士&女流棋士の中で最高の対局数を誇っています。

プロ棋士と女流棋士は兼任できるそうなので、もし里見香奈女流四冠がプロ棋士になると年間の対局数が100局を超えてしまうかもしれません。
結果どうなるかというと、準備不足や体調管理の難しさから一般棋戦も女流棋戦も成績が下がると思われます。
だったらプロ棋士だけに絞って活動すればいいと思う人もいるかもしれませんが、そうなるとおそらく里見香奈女流四冠の収入が減ってしまうはずです。
将棋界は現在かなり盛り上がっており、ここ数年で賞金額の高い女流棋戦が2つもできました。
そのため、里見香奈女流四冠のようにタイトルをいくつも獲得している女流棋士は、大半のプロ棋士以上の収入を得ているという実態があります。
以上のように、里見香奈女流四冠が棋士編入試験を受けるかどうかの判断は難しいところが多々あるわけです。
里見香奈女流四冠の中には、女性初のプロ棋士になることに対し思うこともあるでしょうし、女流タイトルの独占という夢もあることでしょう。
ですので、軽々に里見香奈女流四冠にプロ棋士になる選択を促すことはできません。

ここまでの話を聞いて、なぜ女性のプロ棋士制度が一般の棋士と別枠で作られているのかについて疑問に感じる人もいるかと思います。
スポーツの世界なら体力的な問題から男女でプロ制度を分けることも当然な話ですが、頭脳競技である将棋なら、わざわざ女子に限ったプロ制度を作る必要がないと思う人もいるはずです。
しかし、現実的に将棋を行う人の割合は圧倒的に男性が多いため、棋力についても男女に実力の差がかなりあります。(男女による思考的な差が棋力に影響している可能性もあるが、その点についてはよくわかっていない)

そのような状況の中で、里見香奈女流四冠は実力を買われ奨励会というプロ棋士の養成機関に特別入会し、女性として初めてプロ棋士になる最終試験に当たる三段リーグにまで上り詰めました。
しかし里見香奈女流四冠をもってしても、三段リーグでは良い成績を残せず、結局プロ棋士になることは不可能だったのです。

そんな里見香奈女流四冠が、女流棋士枠として用意された一般棋戦への参加でプロ棋士に対し勝利を重ね、編入試験という特別制度によるプロ棋士への道を掴んだわけです。
しかし、プロ棋士になる手前の三段リーグを勝ち抜けなかった里見香奈女流四冠が、プロ棋士に勝利を重ねるということには普通に考えて違和感があります。
実は、そこに現在のプロ将棋界が抱える大きな問題が見え隠れしているのです。

その問題とは、三段リーグの参加者がプロ棋士のおおよそ1/4から1/3よりも棋力が上であるという事実です。

プロ棋士にとって最大の舞台である順位戦というリーグ戦には、最高峰のAリーグからB1リーグ、B2リーグ、C1リーグ、C2リーグという5つのリーグがあり、上位ほど人数が絞られるピラミッド構造となっています。
このC2リーグの平均よりも、三段リーグのほうが実力が上ではないかとも言われているのです。
このようなことは、将棋のコアなファンなら全員知っているレベルの話となっています。

つまり現在の将棋界は、強い人がプロになれず、弱い人がずっとプロで居続けるという構造になっているわけです。

プロ野球で例えるなら、多くの選手が50歳程度まで現役を続けて、ドラフトで各球団2名までしか入団させていないような構図です。
そして三段リーグまで上がったもののプロ棋士になれなかった人は、将棋教室を開いたり(または将棋教室で働いたり)、将棋関係のライターになったり、最近では将棋に関するYouTuberになったりと、それなりの割合で将棋に携わる仕事をしています。
図に表すと、現在の将棋界は以下の通りです。

現状の将棋界
三段リーグ
少数がプロになる プロになれないが、棋力が高いため将棋に携わる仕事に就く
棋力が落ちてもプロで居続ける 実際はプロ以上の棋力がある

なぜこのような事態になっているのかというと、将棋のプロ組織をプロ棋士自身が運営しているからです。
スポーツほどではないにせよ、将棋も加齢と共に棋力が低下していくのですが、現在のプロ棋士の多くは60歳を過ぎても現役を続けています。
そのような高齢のプロ棋士が棋力とは違った一種の権力を得ることで、自分たちが引退しなくてもいいようなシステム(自分たちがいつまでも収入を得ることができるシステム)を作っているわけです。
子供の頃から将棋しかしてこなかった人が、40代や50代で世に放たれることに対する恐怖心があるのかもしれませんが、これではプロの競技として実力主義が担保できません。

引退する人の年齢が高い一方で、プロ棋士になれる若者は基本的に1年に4人に絞られています。
この影響から、アマチュア棋士の中にはとてつもない棋力を持った人が現れることもあり、そのようなアマチュア棋士を救うための制度が棋士編入試験なのです。
里見香奈女流四冠の場合は、女流棋士として一般棋戦へ参加する機会が多かったため、普通のアマチュア棋士以上にプロ棋士と戦う機会があり、三段リーグの退会から短い期間でプロ編入試験の受験資格を得ることができました。

こういったプロ将棋界の歪な状況を、私は以下のように見直すべきだと思います。

理想の将棋界
三段リーグ
多くの人がプロになる
棋力が落ちたら引退する
将棋に携わる仕事に就く

現状は、三段リーグまで到達した人などを中心に、プロ棋士になれなかった棋力の高い人が将棋に携わる仕事に就いているわけですが、プロ棋士になる人と引退する棋士の数を共に増やし、将棋に携わる仕事は引退した元プロ棋士が行うような構図にするべきではないでしょうか?
現在の三段リーグのレベルを考えれば、最低でも年間10人ぐらいはプロ棋士にするべきだと思います。

こういった構造改革をしてこそ、将棋界は実力で勝負する厳しいプロの世界だと胸を張って言えると私は考えます。

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コメント

  1. より:

    http://kishibetsu.com/ranking2.html
    あたりを見て、奨励会員以下を首にするといった感じですかな?
    130-169あたりをくびにすれば、なるほどかなり人が減らせますな。
    その分新人やアマチュアを入れると。

    2022/06/28のランキングだと、
    先崎とか島は成程もうパッとしないしクビが妥当。
    勝俣先生、南先生、塚田先生、福崎先生も解説だけさせとけばよい。
    所司先生はシャンチーでもやって、浦野先生は詰将棋に専念、
    中田功の振り飛車は時代遅れ、中座飛車も引退。
    ご老体の青野御大も理事でもがんばればよい。

    そんな感じですかね?

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