1997年に連載開始され、今日に至るまで高い人気を保ってきた漫画『ONE PIECE』が最終章に入り、大きな盛り上がりを見せています。
今年の夏に公開された映画は興行収入180億円を超える大ヒットとなり、人気歌手のAdoが歌っている数々の劇中歌はYouTube内の累計再生回数が3億回を優に超えています。
公開にズレのある海外のことを考えれば、これらの数値はさらに上がるはずです。
しかし私は、この『ONE PIECE』の今後に一抹の不安を感じています。
『ONE PIECE』の作者である尾田栄一郎さんは、話を広げる上手さは折り紙付きですが、話を納めることについては未知数と言えます。
『ONE PIECE』では、連載開始当初から読者に対し謎が少しずつ提示され、読む者の興味を惹いてきました。
この謎めいたストーリー展開を用いた手法はネット上で様々な議論が起こり、インターネットが当たり前になりつつある時代にマッチして『ONE PIECE』がヒットした由来になっていると共に、後の漫画にも大きな影響を与えています。
日本には『終わり良ければ全て良し』という“ことわざ”がありますが、逆に終わりがひどければ今までの評価を一気に落とす可能性もあり、実際、過去にはそういった漫画も多数生まれてきました。
日本の漫画は基本的に作者1人でストーリーを考えるので、どうしようもないレベルの終わり方をするものも珍しくなく、先日最終回を迎えた『東京卍リベンジャーズ』も終わり方が打ち切りのようだと話題になったそうです。
『ONE PIECE』にも、こういった不安を感じるわけです。
ただ『ONE PIECE』は1度だけ話が収まる方向に向かったことがあります。
それは頂上戦争というストーリーが展開されたときのことで、ここまでが物語上の前編(サバイバルの海 超新星編)、これ以降が後編(最後の海 新世界編)に分かれているのです。
しかし、この前編(頂上戦争編)のまとめ方がイマイチでした。
頂上戦争では、『ONE PIECE』の主人公であるルフィの兄(この戦いの冒頭で義理の兄と判明)で読者の人気も高いポートガス・D・エース(以下、エース)が海軍に捕まり、それを仲間である白ひげ海賊団が救出にやって来て戦いが起こります。
『ONE PIECE』の世界では海賊よりも海軍のほうが悪役なので、読者は白ひげ海賊団側を当然応援します。
その後、ルフィも白ひげ海賊団側に加勢するのですが、結局、この戦いはエースと白ひげ海賊団のトップである白ひげが死んで終結してしまうのです。
一方、海軍のほうは大きな被害を負ったものの主要なキャラクターが亡くなるようなことはなく、結果は白ひげ海賊団の完全敗北でした。
この戦いで特にイマイチだと感じたのが、エースの死に方です。
白ひげは初登場のときから高齢かつ点滴だらけで、戦いの途中では仲間の裏切りで腹に剣を刺されるなど死亡フラグが何重にも立っていました。
その上で、戦いの最終局面で家族と呼ぶ仲間たちを逃がすために自ら犠牲になることを選ぶなど、死に対する説明付けが十分なされています。
しかし、エースの死は突然かつ完全に無駄死にだったのです。
エースは主人公の兄として突然現れた後、主人公たちとは別のストーリーを歩んでいたため登場することは少なかったのですが、とても強く登場頻度に合わないような人気の高さを誇っていました。
更に、頂上戦争時には実の父親が『ONE PIECE』における最大のキーパーソンであろうゴール・D・ロジャーであることが発覚するなど、大いに注目が集まります。
エースに対する読者の感情は、
1、主人公の兄として突然現れ、とてつもない実力者であることが判明したことで期待感MAX状態!
2、その後、紆余曲折あり黒ひげという作中最大と思しき敵と戦い、勝敗が不明で不安感が高まる
3、黒ひげに敗れ海軍に捕まっていたことが判明し、腑抜けな発言を繰り返すようになりガッカリ
4、頂上戦争の最終局面でついに開放され、大復活でテンション最高潮!!
5、突然の死・・・
という感じでした。
エースの登場は本当に衝撃的で、主人公の兄という立場や実力から物語りにどう絡んでくるのか多くの人は大いに注目したかと思います。
そんなエースを黒ひげに敗北させて1度完全に落とし、その状態を長く維持して読者の気持ちをヤキモキさせた後、ついに復活したとテンションが上がったところで突然エースは死んでしまうのです。
このエースの死が、読者の納得を得づらい死に方だったことは間違いありません。
しかもエースは親父と慕う白ひげがバカにされたことに激高し、逃げれる状態だったことを台無しにして死んでいるため、生き残れたのではないかという思いも強くなっています。
白ひげからしてみても、危険を承知でエースを助けに来て命を投げ売ってまで逃がそうとしたのに、結果、エースは安い挑発に乗って亡くなってしまったわけですから、報われない死を向かえたことになります。
そもそも主人公の義理の兄で『ONE PIECE』全体のキーパーソンキャラであろうゴール・D・ロジャーの息子であるエースが死ぬには、もっと明確な理由付けが必要でした。
例えば、エースの死によって仲間である白ひげ海賊団が全員逃げ帰れたとか、ルフィの能力がその場で覚醒し、その後のストーリーにも大きな影響があるなどといった出来事が必要だったかと思います。
しかし、そういったこともなくエースは死んでしまうのです。
エースが死ぬことはストーリー上決まっていたそうなのですが、だったら尚のこと死に対する説明付けをする作業はいくらでも可能だったわけで、そういったこともなく無駄死にしたことは作者の演出が下手だったと指摘せざるを得ません。
25年間も日本漫画のトップを張ってきた『ONE PIECE』の物語が上手く収まるのか?
連載開始から今日に至るまでひたすら話を広げてきた『ONE PIECE』の物語りに、作者の尾田栄一郎さんはどうやって収集をつけるのか?
期待をする一方で、エースの死に方を思うとどうしても不安を感じてしまいます。
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