今年は、週刊少年ジャンプが50周年を迎え、多方面で盛り上がりを見せたそうです。
そんな中で、漫画ファンが1番気になる話といったら、
『歴代の週刊少年ジャンプ作品で、どの作品が1番面白かったか』
という話題でしょう。
この問いに対して、
『ドラゴンボール』
『ONE PIECE』
『SLAM DUNK』
などの作品を挙げる人が多いようですが、この問いに対する答えは決まっています。
それは、
『キン肉マン』
です。
漫画好きな人間であるならば、この問いに対して無条件でキン肉マンと答えなければなりません。
漫画界には大友以前と大友以後という世界があります。
これは手塚治虫以降続いた漫画の記号的な作画を、AKIRAや童夢などで有名な漫画家『大友克洋』が、実世界をそのまま再現したかのような細かな描写と、映画のようなカメラアングルで漫画を描いたことにより起こった漫画界の一大革命です。
この出来事は、おおよそ1970年代後半に起こったのですが、同じ時期に(もしくは少し遅れて)少年漫画界にも大きな革命が起こりました。
それがキン肉マンの登場で、少年漫画界には『キン肉マン以前とキン肉マン前後』という世界があるのです。
キン肉マン以前のバトル系漫画は、ウルトラマンや仮面ライダーのような、基本1人のヒーローが悪を倒していくというわかりやすい構図でストーリーが展開するか(仮にこれを1人戦闘型と呼びます)、あるいはガッチャマンのように同一組織の運命共同体のような集団が悪に立ち向かうという展開で、いずれにせよストーリーは単調になりやすく、主人公側がなんだかんだで勝利することで話の決着がつきます。
それがキン肉マン以降は、グループ対グループの戦闘に変わっていったのです。(仮にこれをグループ戦闘型と呼びます)
このことによりバトル系漫画の話の幅がとても広がりました。
事実、キン肉マンの登場以降は、少年漫画の中でバトル系漫画が圧倒的な支持を集め一大勢力となっていきます。
キン肉マンの世界では、味方側にも敵側にも多数のキャラクター(超人)が登場しますが、味方側の超人も敵側の超人もガッチャマンのように同一集団というわけではありません。
例えばロビンマスクやウォーズマンはキン肉マンの仲間ではありますが、同じ組織に所属しているというわけではなく、各々に独自のストーリーやバックボーンがあります。
当然、考え方にも違いがあり、時には敵になることすらあるのです。
これは敵側の中でも同じことで、単純な悪が存在しているわけではないので敵側同士での争いもあり、読者側からするとどちらが勝利するか分からいためストーリー展開が読みづらく、楽しく読み進むことができます。
超人オリンピックの『ウォーズマンvsラーメンマン』や、王位争奪戦の『フェニックスチームvsソルジャーチーム』などは、本気でどちらが勝つか分からず興奮したものです。
そしてキン肉マン以降のバトル系漫画は、ほとんど全てがグループ戦闘型になっていきます。
このことは、キン肉マンより少し後に連載された『魁!!男塾』や『聖闘士星矢』などを見れば明らかです。
キン肉マンと同時期の作品で見ると、『北斗の拳』は、まだキン肉マン以前とキン肉マン以後の中間点あたりの作品で、1人戦闘型の主人公に、各ストーリー毎に仲間が加わる程度で、キン肉マンの影響がまだ薄いことがわかります。
『ドラゴンボール』は、最初は孫悟空が1人が戦うことが多い1人戦闘型の要素の強いバトル系漫画でしたが、サイヤ人との闘い以降は完全にグループ戦闘型に移行します。
このように、この時代におけるバトル系漫画には、キン肉マンの影響がハッキリと見てとれるのです。
そしてその後のバトル系漫画は、ほぼ漏れなくグループ戦闘型となっており、『幽遊白書』、『HUNTER×HUNTER』、『NARUTO』、『BLEACH』などは全てグループ戦闘型のバトル系漫画となっています。(『ONE PIECE』は例外でガッチャマン型のバトル系漫画)
このことは、週刊少年ジャンプだけではなく他社の漫画にまで影響し、週刊少年マガジンで人気を得たバトル系漫画の『FAIRY TAIL』も完全にグループ戦闘型を採用していますし、バトル系漫画ではない『進撃の巨人』ですらグループ戦闘型の影響が見てとれます。
以上のように、キン肉マンは後の少年漫画に大きな影響を与えたのです。
また、このグループ戦闘以外の部分でも、キン肉マンは少年系バトル漫画において画期的な革命を起こしています。
例えば、戦った敵が味方になるというバトル系漫画のお決まりのパターンも、キン肉マンは先んじて取り入れました。
この手の話はキン肉マン以前もあったかもしれませんが、キン肉マンは戦った相手のほとんどが漏れなく仲間になり、このシステムを明確に定着させました。
これは、『ドラゴンボール』、『魁!!男塾』、『聖闘士星矢』、『NARUTO』、『BLEACH』などで採用されています。
また死んだキャラが頻繁に生き返るという本来あり得ないような話を始めたのも、キン肉マンが最初だったかと思います。
キン肉マンでは死んだ超人が生き返ることがよくあったのですが、これは『死』というわかりやすい敗北で話を盛り上げながら、過去の人気キャラは再び使いたいという作者のご都合主義的なシステムです。
普通の漫画家なら敬遠するこういったシステムを、キン肉マンでは思い切って採用しました。
当然、大人が見たらなんだそりゃと思うのでしょうが、少年漫画は対象読者が子供なので、細かいことは気にしないでいいのです!
ちなみに他の作品では、
『ドラゴンボール』→ 神龍により生き返る
『魁!!男塾』→ 王大人の治療により命を取り留めていた
『聖闘士星矢』→ 冥界に行くことで死んだキャラが復活
『NARUTO』→ 穢土転生で死んだキャラが復活
などとなんだかんだ理由をつけて、死んだキャラクターを復活させています。(BLEACHも何人か復活している)
このように、キン肉マンは後の少年漫画界に数々の画期的なシステムを生み、後の作品に大きな影響を与えている漫画なのです。
では、なぜキン肉マンがこのような画期的なシステムを次々と生み出したのでしょうか?
おそらくそれは、キン肉マンがプロレスという現実世界を一部踏襲したバトル系漫画だったからだと思われます。
ハッキリ言ってしまえば、地球を侵略するような敵とプロレスリング内で戦うというキン肉マンの話は荒唐無稽もいいところです。
しかし、この荒唐無稽な発想が漫画界において画期的なシステムを多数生むことになったのです。
実際のプロレスでは、正義(ベビーフェイス)と悪(ヒール)の単調な戦いではなく、個々のプロレスラーが様々なイデオロギーをもって戦っています。
現実世界では、ウルトラマンや仮面ライダーのような単純な正義と悪の戦いなどはありません。
また、プロレスでは怪我からの復帰、海外遠征からの帰国、団体間での移籍などの理由でいなくなったと思ったレスラーがしれっと復帰したりすることがあり、キン肉マンにおける死んだキャラの復帰に影響しているものと思われます。
更にプロレスは仲間内での裏切りなどもよく起こる世界で、こういった現実の人間が行っていることをベースにバトル系漫画を作った結果、今までのバトル系漫画にはなかったような話の広がりが生まれたものと想定されます。
以上、キン肉マンが面白いことについては、へのツッパリはいらんのです!
言葉の意味はよく分からないかもしれませんが、とにかくキン肉マンは凄いのです。(;^_^A
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