昨日、栄和人至学館大学レスリング部監督(以下、栄和人監督)が、オリンピックの女子レスリングで4連覇中の伊調馨選手に対し、パワハラを行っているとの報道がありテレビでも大々的に報じられました。
報道の内容は、栄和人監督が伊調馨選手に対し、練習場所に出入り禁止したりコーチに指導をやめるよう要請したというもので、伊調馨選手は現在まともに練習もできない状況であるとのことです。
報道の中身については本人たちしか分からないのことなので、ここで何かを述べるようなことはしませんが、私は今回の問題に対する報道で強い違和感を感じました。
それは今回の問題に関するコメントをしたワイドショーのコメンテーターについてです。
今回発表された伊調馨選手の現状に対し、
・レスリング協会が伊調馨選手の練習場所を準備するべきだ
・協会全体で伊調馨選手のオリンピック5連覇に向けてバックアップするべきだ
・栄和人監督は強化本部長なのだから伊調馨選手も対しても積極的に支援するべきだ
・伊調馨選手のオリンピック5連覇は日本人全員の望みのはずだ
などという、トンチンカンなコメントをするワイドショーのコメンテーターが多く、あまりのレベルの低さに私は驚愕してしまいました。
東京オリンピックの日本代表レスリング選手は決まっていない現在の状況下では、当然、伊調馨選手と同じクラスでオリンピック進出を目指す日本の女子レスリング選手がいます。
協会は、こういった選手たちにも目を向けなければならなず、伊調選手だけに手を差し伸べるようなことをしてはなりません。
もしそんなことをしたら、それこそが問題行動です。
栄監督も、日本レスリング界全体に対する強化本部長という立場かつ至学館大学レスリング部の監督なのですから、袂を分けた伊調馨選手を特別に支援する必要はありません。
こういった状況を無視し、伊調馨選手が東京オリンピックに出場することありきでコメントしているコメンテーターは、言葉が悪いですが『頭がイカれている』レベルと言って過言ではないでしょう。
例えば、柔道の谷亮子さんは、2007年リオデジャネイロ世界柔道選手権の代表選手選考大会となっていた全日本選抜柔道体重別選手権大会にて、福見友子さんに負けてしまいますが、なぜか世界選手権の代表に選ばれます。
しかも、妊娠出産のため2年間柔道の大会に出ていなかったにも関わらずです。
その後、リオデジャネイロの世界選手権で優勝した谷亮子さんは、北京オリンピックの代表選手選考をも兼ねていた全日本選抜柔道体重別選手権大会に前年同様出場し、今度は決勝で山岸絵美さんに負けます。
しかし北京オリンピックの代表に選ばれたのは、谷亮子さんでした。
全日本柔道連盟の説明した選考理由は、前年の世界選手権優勝したことと今までの実績ということでしたが、そもそもその世界選手権の選考に疑惑があるのですから、全日本柔道連盟の言ってることには説得力がまるでありません。
谷亮子さんに勝ちながら北京オリンピックへの道が閉ざされた福見友子さんと山岸絵美さんは、結局オリンピックで活躍することはありませんでした。(2人共既に引退)
彼女らは、谷亮子の壁ではなく全日本柔道連盟の壁を超えることができなかったのです。
2015年の北京世界陸上における女子マラソンの代表選選考も問題があると話題になりました。
北京世界陸上のマラソン女子代表選手は、前田彩里選手、伊藤舞選手、重友梨佐選手の3人が選ばれましたが、選考レースの結果は以下の通りです。
【横浜国際マラソン】
1位 田中智美 2:26:57 落選
【大阪国際マラソン】
3位 重友梨佐 2:26:39 選出
【名古屋ウィメンズマラソン】
3位 前田彩里 2:22:48 選出
4位 伊藤舞 2:24:42 選出
田中智美選手は選考3レースの1つで優勝しているにも関わらず、選ばれたのは他レースで3位や4位になった選手たちでした。
確かにタイムは、選ばれた3人が田中智美選手を上回っています。
しかしマラソンはタイムだけではない駆け引きの部分も大きいので、3位より18秒遅れの1位のほうに価値があると考えるのが普通です。
にも関わらず、選考レースで優勝した田中智美選手は北京世界陸上の代表には選ばれないという、不可解な選考がされたのです。
少し毛色が違いますが、『K-1 WORLD MAX ’08』の準決勝で戦った魔裟斗vs佐藤嘉洋の試合では、極めて疑惑のある判定が話題となりました。
この試合は3ラウンド制で、佐藤嘉洋選手は最終ラウンドとなった3ラウンドに魔裟斗選手からダウンを奪いました。
しかし判定は1-0(2人は引き分け)となり、2人のジャッジが優劣が着いていないということで延長戦に突入、最終的に魔裟斗選手の勝利となりました。
3ラウンドまでのジャッジは、魔裟斗選手側から見て、
1R:10-10、10-10、10-10
2R:10- 9、10- 9、10- 9
3R: 8-10、 8- 9、 8- 9
計:28-29、28-28、28-28
という結果でしたが、当時のK-1の判定に関する規定には、ダウンした場合は2点減点(8点以下)になることと、常に優勢な選手を10点とすることと定められています。
そのため、3ラウンドのポイントは佐藤嘉洋選手の10-8にならなければおかしいわけです。
このことに対してK-1は、ダウン後に魔裟斗選手が盛り返したため、優勢な選手を10点にするルールを”試合中”になくしたと説明しました。
これはもう滅茶苦茶すぎて呆れるレベルです。
※K-1の判定は、その他にもルールが曖昧な部分や徹底されていない部分が多々あり、魔裟斗選手にかかわらず疑惑の判定が多数ありました。
以上のような問題は、結局、有名な選手や人気のある選手、または団体の上層部に気に入られている選手が優遇されているという実態の現れであり、スポーツを統括する団体が実力ではなく人気を優遇して様々な忖度をしているという証です。
スポーツを統括する団体が、スポーツの本質である実力勝負を否定するということは、そのスポーツはただのエンターテイメントでしかないと言っているようなものです。
このような選考や不可解な判定をされると、夢を持って厳しい練習に耐えている下位の選手はたまったもんじゃありません。
冒頭に書いた伊調馨選手を優遇するようなコメンテーターの発言も、伊調馨選手を倒すことを目標に頑張っている日本人選手にとっては、怒りで震えるレベルで腸煮えたぎる思いで聞いたに違いないでしょう。
メディアが有名選手を過度に取り上げ一種のスターにすれば、その対戦相手をまるで悪者のように扱われてしまいます。
私は、こういった状況こそがメディアによるパワハラだと思います。
正直、現在のテレビはスポーツに対して冒涜を続けている状況です。
その他にも、平昌オリンピックのメダリストたちに対して失礼な扱いをするワイドショーなどが話題になっているようですが、スポーツに対して理解も興味もないのなら、ワイドショーはスポーツの報道なんてやめてしまえと、強い怒りを持って言わせていただきたいと思います。
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コメント
おおむね 同感です
しかし 伊調さんの練習拠点は 協会の圧力無く 確保されるべきですね