なぜジブリはディズニーになれなかったのか?

漫画・アニメ
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当記事のタイトルは『なぜジブリはディズニーになれなかったのか?』ですが、もう1つのタイトル候補は『なぜジブリは失敗したのか?』でした。
ここで言う“失敗”は、作品に対する失敗ではなく経営的な失敗を表しています。
スタジオジブリは既に常設のアニメ制作会社ではなく、現在公開されている『君たちはどう生きるか』を最後に完全な版権管理会社に移行する可能性も高くなっています。

この記事は元々ジブリパークのオープンが話題になった際に書きかけたもので、その時点で公開されたスタジオジブリの最新作『アーヤと魔女』は、テレビ放送が先行だったとは言え興行収入が千と千尋の神隠しの1/100程度となる約3億円というひどいものでした。
その後、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』が今夏に封切られ現在も公開中ですが、宮崎監督作品としては『もののけ姫』以降で最低の興行収入(100億円以下)になるものと予想されています。
おそらくスタジオジブリのピークは『もののけ姫』から『千と千尋の神隠し』が公開された2000年前後で、作品的にもそれ以降は衰退期に入っていたものと思われます。

経営的に見ても、2014年に公開された『思い出のマーニー』をもって制作部門が解散し、常設のアニメ制作会社としての歴史に幕を閉じました。
宮崎監督の年齢と近年の制作ペースを考えると『君たちはどう生きるか』が最後の監督作品になる可能性が高く、高畑勲監督はすでに故人、『アーヤと魔女』で記録的な低興行収入を記録した宮崎吾朗監督に次のチャンスが訪れるとも思えません。
その他に監督を務められそうな人材は、制作部門が解散した際にスタジオジブリを離れています。
そう考えると、スタジオジブリはもう二度とアニメ制作をせずに、完全な版権会社に移行する可能性も捨てきれないわけです。

スタジオジブリの作品といえば魅力的なキャラクターが多数いることで有名ですが、そんな優良なコンテンツがありながら経営的に失敗したということは、よほど経営者が無能だったということなのでしょうか?
スタジオジブリには自社のコンテンツを活かす『ジブリ美術館』というものがありますが、ディズニーランドに比べると規模がかなり小さく展開もありませんでした。
2022年になってジブリパークが完成しましたが、こういった施設がもっと早く、さらには広域に展開出来なかったものかと個人的には思います。
正直、1990年代のスタジオジブリからは、天下のディズニーにすら勝てるような勢いを多くの日本人が感じていたと思います。
少なくともジブリ美術館は国内にも海外にも複数あるぐらいの展開が可能だったように感じます。
しかし、実際はジブリ美術館ができた2001年ごろがジブリ人気のピークだったわけです。

では、ここで宮崎駿監督作品の公開日をご覧ください。

1984年03月11日:風の谷のナウシカ
1986年08月02日:天空の城ラピュタ
1988年04月16日:となりのトトロ
1989年07月29日:魔女の宅急便
1992年07月18日:紅の豚
1997年07月12日:もののけ姫
2001年07月20日:千と千尋の神隠し
2004年11月20日:ハウルの動く城
2008年07月19日:崖の上のポニョ
2013年07月20日:風立ちぬ
2023年07月14日:君たちはどう生きるか
※『風の谷のナウシカ』はスタジオジブリ制作の作品ではないが、ジブリ作品として扱うことが定番となっている。

『紅の豚』までは、おおよそ2年に1作のペースで宮崎監督の長編アニメ映画が作られていたのですが、『もののけ姫』以降このペースは半分程度にまで下がります。
現在公開中の『君たちはどう生きるか』は、前作から10年もの月日が空いてしまいました。
1990年代前半までは高畑監督の作品も合わせ毎年のようにジブリ作品のアニメ映画が見れ、またこの時期のジブリ作品はキャラクターもとても豊かで多くの人に愛される作品だったのですが、『千と千尋の神隠し』以降は年々とメッセージ性の強い作品が増え好き嫌いが分かれる作品が増えていきます。
『風立ちぬ』などは、まずキャラクターグッズが売れない作品と言えるでしょう。
さらに制作期間が長くなることで制作費もかさみ、前作で稼いだお金を次作の制作費につぎ込む自転車操業のようなアニメ制作をしていたように感じます。

経営面だけを考えれば、宮崎監督は企画・脚本・キャラクターデザインまで(最高でも大まかな絵コンテまで)を担当し、監督は別の人に任せたほうが良かったのかもしれません。
その代わりに制作ペースを早め、高畑作品と合わせ長編アニメ映画を毎年1本公開できる体制を整えれば、経営的にもスタジオジブリは世界を代表するような存在になっていた可能性があります。
『もののけ姫』レベルの大作よりも『耳をすませば』レベルの作品を毎年作ったほうが経営上は良く、ディズニーのように魅力的なキャラクターをどんどん増やして、キャラクターグッズの販売で利益を生み出すシステムがスタジオジブリにおける経営面でのベストな選択だったと思います。

毎年映画が公開されれば季節(おそらく夏)の風物詩のような存在になり、国民はワクワクして毎年ジブリ作品を待ち望んだはずです。
しかし実際は制作期間が長くなるとともに魅力的なキャラクターのいない作品が増え、スタジオジブリの人気は尻すぼみとなってしまいました。
それに加え制作費は上がり続け会社経営的にもうまく行かず、結局はディズニーのような巨大企業になるようなことはなく、常設のアニメ制作会社を維持することすら不可能となってしまったわけです。

こういったスタジオジブリの状況について、金儲け主義を否定し作品の質にこだわったアニメスタジオと評価する人もいるかもしれません。
しかし、その割には話題先行としか思えないような声優起用(『ハウルの動く城』の木村拓哉や『風立ちぬ』の庵野秀明など)で作品の質を落としているようにも思えます。
現在公開中の『君たちはどう生きるか』も、米津玄師という人気アーティストを安易に起用している気がしてなりません。
結局のところ、スタジオジブリの経営面を担当している人のレベルが相当低かったとしか思えないわけで、おそらくその戦犯は元アサヒ芸能記者の鈴木敏夫氏なのでしょうが、彼については過去に十分批判記事を書いているので今回は特に言及しません。(参考記事:なぜ鈴木敏夫がプロデュースしたジブリ作品はつまらないのか?

いずれにせよ、往年のジブリファンが今感じていることは『君たちはどう生きるか』よりも『スタジオジブリはどう生き残るのか』なのではないでしょうか?

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コメント

  1. 無名 より:

    徳間書店とのつながりからわんぱっくコミックでのコミカライズをやっていたら電子化時代で映像以外の身近な収入源になっていたのにな。
     わんぱっくコミックもある意味ジブリに殺されたし、ジブリ関連のコミカライズやスピンオフメインにシフト出来ていたら児童誌としてもやっていけた。

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