将棋棋士の藤井聡太七段が、最年少でタイトル“棋聖”を獲得し、新型コロナウイルスの感染流行第二波が発生し混乱する日本で、あまり取り上げられないポジティブな話題として大きなニュースとなっています。
日本将棋連盟の佐藤康光会長などは、この最年少記録を『今後破られることのない記録』などと持ち上げ、花を添えています。
しかし私からすると、藤井棋聖のタイトル獲得は遅いと感じたぐらいです。
藤井棋聖は、今まで誕生した将棋棋士の中で明らかに1番強いと言えます。
同じ時代に生きたプロ棋士の中で考えて、ここまで突出した人はいなかったことでしょう。
もし藤井棋聖レベルに突出した実力をもった棋士を挙げるとするなら、江戸時代末期に登場した伝説の将棋棋士『天野宗歩』ぐらいしか可能性を見出せないですが、さすがに古すぎて現在と状況が違いすぎます。
現行のプロ制度の中で突出した実力をもったプロ棋士といえば、
大山康晴永世名人
中原誠永世名人
羽生善治九段
の3人が有名ですが、この3人をもってしても藤井棋聖に比べると見劣りすると言わざるを得ません。
正直な話、上記したような伝説級のプロ棋士と比べても、藤井棋聖はレベルが1段上と言わざるを得ないのです。
藤井棋聖が最初にメディアで話題になったのは、29連勝というプロ棋士の連勝記録を打ち立てたときですが、その記録をプロ入り第1局目からやってのけたというのですから尋常ではありません。
現在、日本プロ野球投手の連勝記録は田中将大選手の28連勝ですが、この記録を高卒1年目のルーキーピッチャーが春先の登板1試合目から連勝を続けて破るなんて想像しがたいと思います。
しかし藤井棋聖は、こういった漫画レベルの記録を実際に次々と打ち立てているのです。
議論はありますが、私はあの時点(29連勝達成時点)で既に藤井棋聖は現行のプロ棋士の中で1番強かったと思います。
当時の自分の感覚では、藤井棋聖は谷川浩司九段や渡辺明二冠のような永世タイトルを獲得するような大棋士になる可能性はあると感じていましたが、“永世七冠”という今までなかった言葉まで作ってしまった羽生九段にはさすがに及ばないと思っていました。
しかし現状を考えれば、藤井棋聖は全盛期の羽生九段をも超えるほどの突出した実力の持ち主と言えます。
現在、現役のプロ棋士で通算成績が4割を切る棋士は、アマチュアからの編入試験を経て先月デビューを果たした折田翔吾四段(1戦1敗)を除き、1人もいません。
将棋のプロ棋士になるにはとても厳しい条件があるので、プロ棋士は漏れなく卓越した実力をもっており、実力は拮抗しそこまで突出して勝ち続ける人は“本来”現れないのです。
将棋のプロ棋士で通算成績が7割を超えればトップ中のトップと見なされ、実際に100局以上戦って7割以上の勝率を維持している現役のプロ棋士は、
永瀬拓矢二冠 (358勝138敗、勝率0.7217)
羽生善治九段 (1461勝611敗、勝率0.7051)
千田翔太七段 (258勝101敗、勝率0.7186)
大橋貴洸六段 (133勝48敗、勝率0.7348)
佐々木大地五段(162勝67敗、勝率0.7074)
※全て2020年7月16日現在
の5人だけとなっています。
豊島将之竜王・名人や渡辺明二冠ですら、7割という勝率には達成していません。
プロ入り後間もない棋士は、レベルの低いリーグやシードされていないトーナメントに参加するため勝率が上がりやすくなり(大橋貴洸六段や佐々木大地五段などはこの例に該当)、藤井棋聖もこの例に該当するのですが・・・
藤井聡太棋聖の通算成績(2020年7月16日現在)
184勝34敗、勝率0.844
その点を考慮しても、上記の成績は桁違なのです。
200対局以上で8割を越えるような勝率を残したプロ棋士は今までいなかったわけで、現行のプロ棋士制度が誕生して以来、藤井棋聖がもっとも突出した実力をもっていることは明らかだと思います。
しかも17歳という藤井棋聖の年齢を踏まえればまだ伸びしろがあると考えられ、本当に末恐ろしい人が現れたとしか言い表せないのが現状です。
以上で示した藤井棋聖の実力を考えれば、藤井棋聖は最年少のタイトル獲得ぐらいで騒ぐ人物ではありません。
あの29連勝以降、私が藤井棋聖に期待するのは、8つある将棋のタイトル戦を独占する八冠達成の一点に絞られています。
ひょっとしたら藤井棋聖は、この八冠を10代で達成するのではないかと思っていたぐらいですが、現状を踏まえるとさすがにそれは無理なのかもしれません。
藤井棋聖がプロ入り後に連勝を重ねてマスコミが騒ぎ出したとき、私は藤井ブームは3回来るとどこかで書いたことがあります。(どこで書いたかは忘れたが)
1回目がプロ入り後すぐの連勝(当時)、2回目が最年少でのタイトル獲得(現在)、そして3回目が上記した羽生九段以来となるタイトル独占のときです。
しかもこの3回目のブームは、前の2回のブームを遥かに超えるものになると予測しました。
29連勝の際のフィーバーっぷりも凄かったですが、八大タイトル独占となれば、あの時以上の大騒ぎになると思われるのです。
連勝記録は対局期間の関係でブームは数月程度で収まりますが、タイトル戦は1年に1回しか行われないので、時間をかけて徐々に盛り上がっていき、頂点に達したときは尋常じゃない盛り上がり方になると思われます。
そんな盛り上がった日本の情景を、いつか実際に目にしてみたいというのが私の希望でもあります。
正直、自分が生きている時代に、こんなに凄い人が現れるなんて夢にも思いませんでした。
逆に言うと、人間は想像した以上に可能性を秘めており、佐藤会長が藤井棋聖の最年少タイトル獲得について語った『今後破られることのない記録』という話も、実際はそんなことはなく、今は見ぬ将棋の実力者が近い未来に表れても何ら不思議はないのです。
以上、藤井聡太七段の最年少でのタイトル(棋聖)獲得と、今後の藤井棋聖の活躍について考えてみました。
ちなみの前記した伝説の将棋棋士『天野宗歩』は、当時、家元制のため将棋界最高峰となる名跡『名人』を名乗れない代わりに『棋聖』と呼ばれ、藤井棋聖が初めて獲得したタイトル戦の由来になっています。Σ(゚Д゚)
- 森保ジャパンから感じた危機感と鈴木彩艶選手の起用問題
- ラグビーという頭脳スポーツ
- 高畑勲と富野由悠季がアニメに込めた反戦の思い
- トミー・ジョン手術はドーピングなのではないか?
- 大相撲界に改革は必要なのか?
- 岡田斗司夫が行うアニメ考察のレベルについて
- なぜジブリはディズニーになれなかったのか?
- 48チーム出場となったサッカーW杯のグループリーグ・決勝トーナメント仕組み改善案
- 井上尚弥・大谷翔平・藤井聡太で1番すごいのは誰か?
- なぜ日本は野球が強いのか?
- 女子サッカーはなぜ面白くないのか?
- M-1GP2022におけるウエストランドのネタを徹底分析してみた!
- お笑いコンテスト(M-1グランプリなど)の審査方法改善案
- 最終章に入った『ONE PIECE』に感じる不安
- 2026年W杯のグループステージ3チーム制に対する懸念
- ベスト16で負けた日本代表への感謝一色に覚える違和感
- カタールW杯コスタリカ戦にみるチームスポーツの難しさ
- AKB48にとって恋愛禁止はルールではなく〇〇である!!
- 将棋棋士の社会性について(佐藤天彦九段ノーマスク問題の解説)
- AbemaTVと将棋界に対する苦言
コメント