日本でカーリングが話題になったことは過去に3回あります。
1回目は、カーリングが74年ぶりにオリンピック種目として採用された1998年の長野オリンピックのときです。
このときは、カーリングという競技に対する物珍しさが話題となりました。
当時の日本でカーリングを紹介する際は、氷の上で長靴を履いた人たちがデッキブラシを持って転んでいるシーンなどがほとんどで、本格的なスポーツというより遊び感覚で行うレジャースポーツという感覚でカーリングを捉えていた人が多かったと思います。
というより、そもそもカーリング自体を知らない人のほうが多かったことでしょう。
そのため長野オリンピック前には、カーリングの競技内容を説明するようなテレビ番組が多く放送され、それなりに話題の競技となっていました。
2回目に話題になったのは2006年のトリノオリンピックのときです。
このときは、2002年のソルトレイクオリンピックに出場した常呂町出身の女子カーリングチームであるシムソンズを題材とした映画『シムソンズ(主演:加藤ローサ)』がオリンピックに合わせ封切られ、その影響で女子カーリングチームが大きな話題となりました。
結果、女子のカーリングは全試合が中継され、当時の代表チームである『チーム青森』は日本中で人気となり、特に本橋麻里選手へ注目が集まりマリリンブームを巻き起こしました。
※個人的には、本橋麻里選手より目黒萌絵と寺田桜子という漫画のキャラクターみたいな名前をした2人の選手のインパクト強かったのですが。
そして3回目は、今回の平昌オリンピックです。
平昌オリンピックで、女子のカーリング代表チームである『LS北見』が銅メダルを獲得して大きな話題となったことは説明するまでもないでしょう。
※ちなみに3位決定戦でラストショットを投げたイギリス(スコットランド)のイブ・ミアキャット選手は、19歳だった2010年のバンクーバーオリンピックの際に可愛いと日本で話題になっていました。
このカーリングでオリンピックに出場した多くの人が、常呂町という北海道の北東部の小さな町の出身となっており(現在は北見市と合併)、平昌オリンピックに出場したLS北見のメンバーも5人中4人が常呂町出身です。
藤澤五月選手だけは、同じ北見市でも常呂町出身ではなく練習拠点も別の場所でした。(河西建設カーリングホールが練習拠点)
そもそも常呂町と北見市の中心地では直線距離で40km弱も離れており、同じ市内とはいえ全く別の地域なのです。
ちなみに新宿から横浜でも直線距離は30km弱で、首都圏の主要な都市で40km弱というと埼玉県の浦和から神奈川県の川崎あたりとなり、1つの都道府県(東京都)を完全に通り越してしまうほどの距離となります。(北見市は日本で4番目に面積が広い市町村である)
話が少しズレてしまいましたが、常呂町にはカーリングでオリンピックに出場した選手が他にも多数います。
以下、常呂町出身のオリンピック出場選手(全員カーリング選手)です。
近江谷好幸(長野)
佐藤浩(長野)
敦賀信人(長野)
三村容子(長野)
加藤章子(長野/ソルトレイク)※
林弓枝(ソルトレイク/トリノ/ソチ)※
小野寺歩(ソルトレイク/トリノ/ソチ)※
小仲美香(ソルトレイク)※
本橋麻里(トリノ/バンクーバー/平昌)
近江谷杏菜(バンクーバー)
吉田知那美(ソチ/平昌)
小野寺佳歩(ソチ)
鈴木夕湖(平昌)
吉田夕梨花(平昌)
※は映画にもなったシムソンズのメンバー、太字は平昌オリンピックで銅メダルを獲得したLS北見のメンバー
このように、常呂町には14人ものオリンピック出場選手がおり、その内5人は複数回の出場、3人は3回の出場を誇ります。
この14人は出身の中学校も同じなのですが、それもそのはずで常呂町には中学校は1つしかなく、人口も合併当時で5000人弱、現在は4000人弱しかいません。
そのため人口比率で換算すれば、常呂町は日本で1番オリンピック出場率が高い町と言えるでしょう。
このような過疎地域とも言える常呂町に、なぜここまでカーリングが根付いたかというと、それは1988年に国内で初となるカーリングの競技施設・常呂カーリングホール(現:アドヴィックス常呂カーリングホール)を作ったからです。
おそらく娯楽も多くなかった常呂町では、多くの住民がカーリングに熱中したのでしょう。
ある意味、過疎地域だからこそ数少ない娯楽であるカーリングに町民は集中し、異常なまでにカーリングに強い町になったとも言えます。
そして常呂カーリングホールを練習の拠点として、多くの選手達がオリンピックへと羽ばたいていきました。
平昌オリンピックで銅メダルを獲得した『LS北見』も、意味を紐解けばLSは『Loco Solare』、Locoは『常呂っ子』のロコということで、北見市と共に常呂町を冠名したチームです。(ソラーレはイタリア語で太陽)
このLS北見メンバーの関係性を見ると、カーリングという競技がかなり限定的な地域や人数で行われている事情が見て取れます。
以下、LS北見メンバーの関係性です。
・吉田知那美と吉田夕梨花は姉妹
・藤澤五月と鈴木夕湖ははとこ
・吉田知那美と鈴木夕湖は同級生(クラスも一緒)
・吉田知那美と鈴木夕湖と吉田夕梨花は同じジュニアチーム(ロビンズ)出身※1
・本橋麻里と吉田知那美と鈴木夕湖と吉田夕梨花は同じ中学出身
・藤澤五月と吉田知那美と鈴木夕湖は同学年※2
・本橋麻里と吉田知那美と鈴木夕湖と吉田夕梨花は常呂カーリングホールを練習拠点にしていた
・本橋麻里と藤澤五月は河西建設のカーリングホールを練習拠点にしていた※3
・藤澤五月と吉田知那美と鈴木夕湖と吉田夕梨花は北見市内のすぐ近くで働いている※4
※1:中学生だった当時、本橋麻里選手も所属していた日本代表のチーム青森を倒し話題となった。
※2:ジュニアチーム当時から対戦経験があり顔見知りである。
※3:本橋麻里選手は2003年から2005年に藤澤五月選手の地元である河西建設のカーリングチームに所属していた。
※4:藤澤五月選手は保険代理店コンサルトジャパン、吉田知那美選手はネッツトヨタ北見、鈴木夕湖選手は北見市体育協会、吉田夕梨花選手は医療法人美久会國分皮膚科と、みな北見市街地の半径2km以内の場所で働いている。吉田知那美選手と吉田夕梨花選手の姉妹2人の職場は歩いていけるような距離、藤澤五月選手と鈴木夕湖選手のはとこ2人の職場も歩いていけるような距離で、藤澤五月選手と吉田知那美選手と吉田夕梨花選手の職場はほぼ同じ通り沿いにある。
このようにカーリング選手は、同郷や同級生などの子供時代からの顔見知りがとても多い事情が見て取れます。
冬季オリンピックの競技はどれもこういった傾向が強いですが、カーリングは特にこの傾向が強いようです。
長野オリンピック以降、述べ30人の女子カーリング選手が6回のオリンピックに出場したわけですが、その内19人は常呂町出身なのですから、当然といえば当然です。
これは特殊な成功例なのでしょうが、異常な少子高齢化社会で限界集落などの問題が叫ばれる昨今の日本の地方行政問題を解決するヒントが、常呂町とカーリングの関係にあるのではないかと思います。
以上、カーリングと常呂町について考えてみました。
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