乃木坂46の最新シングル『シンクロニシティ』の初週売上(オリコン調べ)が、AKB48の最新シングル『ジャーバージャ』の初週売上(同調べ)を超えました。
AKB48のシングルは実質AKB48グループ全体のシングルCDとして発売され、CD購入特典の握手会には国内の300人を超えるAKB48グループメンバー全員が参加することになっています。
一方、乃木坂46のメンバーは総勢40人程度で、握手会に参加しない人気メンバーもいるそうです。
以上のことを踏まえると、現在の乃木坂46はAKB48を人気面で完全に追い抜いていると言えるでしょう。
2010年代の女性アイドル界で人気を極めたAKB48グループでしたが、近年は人気が低迷している状況が伺えます。
その原因としてもっとも考えられるのが、初期の人気メンバー卒業です。
前田敦子や大島優子に代表されるAKB48創世記を支えた人気メンバーの卒業が、AKB48グループ人気低下の大きな原因になっていることは確かでしょう。
しかし前田敦子、大島優子卒業後の次期エース候補として名が挙がった『まゆゆ』こと渡辺麻友や、『ぱるる』こと島崎遥香などの人気メンバーが在籍していた当時からAKB48グループの人気は明らかに落ち始めていました。
実際に、前田敦子などの人気メンバーが卒業した後にも、
光宗薫
小嶋真子
大和田南那
といった話題のメンバーがそれなりに加入してきたにもかかわらず、AKB48グループの人気は下がる一方で、このようなメンバーたちも結局思ったほどは活躍せずにほとんど卒業することになります。
これは、AKB48グループの人気低下が人気メンバーの卒業以外のところにもあることを示唆していると考えられます。
今回は、このAKB48グループの人気低下の問題を探っていきたいと思います。
実は、AKB48のCD売上はここ数年大きく変わっていません。
この点を考えると乃木坂46の人気が上がっただけでAKB48の人気は落ちていないと思うでしょうが、これは大きな間違いで、現在のAKB48は人気メンバーがいなくなった損失を、人数を増やすこと(グループも増やす)で補填しているのです。
『ヘビーローテーション』発売当時は100人程度だったAKB48グループのメンバーは、現状300人を大幅に超える(国内グループのみ)まで膨れ上がり、これらメンバーを握手会に総動員することでAKB48は何とか見せかけのCD売上を維持しています。
しかしメンバーを増やすことに限界がある各支店(SKE48やNMB48など)のCD売上はかなり下がっており、ここ数年、アイドルファンがAKB48グループから乃木坂46など坂道シリーズに流れていることは明らかとなっているのです。
そしてCD売上をキープしているAKB48も、他の分野では人気の低下が明確になっています。
例えば、以下で示す地上波テレビにおけるAKB48メインのバラエティ番組を御覧ください。
AKB1じ59ふん!→AKB0じ59ふん!→AKBINGO(2008年1月25日~)
週刊AKB→AKB子兎道場(2009年7月10日~2014年3月28日)
有吉AKB共和国(2010年3月30日~2016年3月29日)
AKB600sec.(2010年7月6日~7月30日)
AKBと××!(2010年7月14日~2016年3月23日)関西ローカル
なるほど!ハイスクール(2011年4月21日~2011年10月13日)
AKB自動車部(2012年4月29日~9月30日)
サタデーナイトチャイルドマシーン(2013年4月14日~6月30日)
AKB映像センター(2013年4月22日~9月30日)
恋愛総選挙→※AKB調べ→僕らが考える夜→指原カイワイズ→さしこく(2014年4月3日~2017年3月16日)
AKB48の牛舌GIRLS(2014年4月6日~9月28日)宮城県ローカル
AKBでアルバイト(2014年7月2日~12月24日)
AKB48 旅少女(2015年4月5日~6月28日)
AKB48の今夜はお泊まりッ(2015年10月6日~12月22日)
AKB チーム8のブンブン!エイト大放送(2017年1月28日~4月1日)
※()が放送期間
AKB48メンバーをメインとした地上波の番組は2010年から2015年まで頻繁に作られていましたが、最近は全然作られていません。
また長く続いていた番組も、近年になって次々と終了していることがわかります。
特に『週刊AKB48』や『有吉AKB劇場』といった正にAKB48によるAKB48のための番組も終わってしまい、現在このようなAKB48を全面に押し出した地上波番組は、『AKBINGO』しかないのが現状です。
ラジオの方でも、2010年4月7日から続いていた『リッスン?→リッスン? 2-3』(帯番組でAKB48メンバーは週1出演)が今年の3月で終了し、メディアによるAKB48離れが起こっているのは明確です。
これは、地方グループが次々できて単独としてのAKB48の存在感が薄まっているとも考えられますが、地方グループのテレビ番組がどんどん作られているかと聞かれればそんなことはなく、あっても地方ローカルの深夜番組程度となっています。
このような明らかにAKB48の人気が落ちているとわかる指標はまだあります。
以下のAKB48グループからソロデビューしたメンバーを御覧ください。
大堀恵(2008年10月15日デビュー)
増田有華(2010年4月28日デビュー)
奥真奈美(2010年5月12日デビュー)
板野友美(2011年1月26日デビュー)
前田敦子(2011年6月22日デビュー)
岩佐美咲(2012年2月1日デビュー)
渡辺麻友(2012年2月29日デビュー)
指原莉乃(2012年5月2日デビュー)
河西智美(2012年12月26日デビュー)
柏木由紀(2013年2月6日デビュー)
高橋みなみ(2013年4月3日デビュー)
松村香織(2013年10月20日デビュー)
倉持明日香(2013年5月29日デビュー)
渡辺美優紀(2014年12月24日デビュー)※じゃんけん大会特典
藤田奈那(2015年12月23日デビュー)※じゃんけん大会特典
山本彩(2016年10月26日デビュー)
以上のように、近年AKB48グループからソロデビューを果たしたメンバーは山本彩の1人だけで、その前の2人も、じゃんけん大会の優勝特典でのソロデビューでした。
同じように、まともな派生ユニット(CDデビューした派生ユニット)も近年はほとんど誕生していません。(以下参照)
Chocolove from AKB48(2007年6月27日デビュー)
ノースリーブス(2008年11月26日デビュー)
渡り廊下走り隊(2009年1月28日デビュー)
フレンチ・キス(2010年9月8日デビュー)
Not yet(2011年3月16日デビュー)
DiVA(2011年5月18日デビュー)
NO NAME(2012年8月1日デビュー)
ラブ・クレッシェンド(2015年11月25日デビュー)
じゃんけん民(2016年12月21日デビュー)※じゃんけん大会ユニット
fairy w!nk(2017年12月13日デビュー)※じゃんけん大会ユニット
近年誕生した派生ユニットは、ソロデビュー同様にじゃんけん大会の優勝特典で結成されたユニットで、それ以外ではSKE48の派生ユニット『ラブ・クレッシェンド』しかありません。
しかし、この『ラブ・クレッシェンド』も大した活動をしているとは言えないのです。
かつての派生ユニットは、ソロコンサートをしたり、TV番組に出演したり、自身の冠番組を持ったりと大活躍をしていましたが、現在このような活動をする派生ユニットはいないのが現状となっています。
このようにAKB48グループの人気低迷は明らかなのですが、その原因はどこにあるのでしょうか?
それは、ズバリAKB48グループメンバー複雑化にあると言えます。
前記した通り、AKB48グループは人気メンバーの卒業によって出た損失を賄うためにグループやメンバーを増やしました。
その結果、現在のAKB48グループはとても分かりづらいメンバー構成になってしまっているのです。
現在のAKB48グループは、
AKB48
SKE48
NMB48
HKT48
MGT48
STU48
と、国内だけでも6グループ、メンバーは総勢300人を超え、これらのメンバーが加入と卒業、更には移籍や兼任を繰り返し、AKB48グループは極めて複雑なメンバー構成となっています。
乃木坂46とほぼ同時に結成されたHKT48を比べると、乃木坂46は1期生から3期生までのメンバーが在籍しているのに対し、HKT48は1期生から4期生までの在籍です。
これだけなら大きな違いがないように感じるでしょうが、HKT48にはAKB48グループドラフト会議で加入したメンバーもドラフト1期生からドラフト3期生まで、更に他グループから移籍してきたメンバーや兼任したメンバーもおり(他グループに移籍したメンバーや兼任したメンバーもいる)、乃木坂46よりかなり複雑なメンバー構成になっているのがわかります。
しかもHKT48は、AKB48グループの中ではメンバー構成が簡潔なほうで、本家AKB48に至っては、
1期生から16期生
ドラフト1期生からドラフト3期生
海外から留学生
移籍や兼任経験のあるメンバー
特殊な方法で加入したメンバー
更に、通常とは違う各都道府県代表がメンバーとなっているチーム8も存在しており、もはや奇々怪々なメンバー構成に陥ってしまっているのです。
このようなメンバー構成はコアなファンですら完全把握は難しく、
誰がどのグループに所属するのか?
どのチーム(劇場公演のチーム分け)に所属するのか?
何期生なのか?
そもそも現役なのか卒業してるのか?
移籍したのか兼任したのか?
このようなメンバーの基本的な情報を全ては把握しきれなくなっています。
さすがにメンバー構成を把握できないアイドルグループを応援する気にはなかなかなれず、分かりやすいメンバー構成の乃木坂46などへアイドルファンが移行したと想定されるのです。
また、AKB48グループの運営陣は常に突拍子もないことを行い、ファンもこのようなめちゃくちゃな状況を最初のうちは面白がっていた節があったのですが、この点でも大きな問題が発生しました。
芸能界という世界の性質を考えれば話題性を求めることは仕方ないのですが、AKB48グループはその話題性を求めすぎた結果、本来触れてはいけない部分にまでにも話題性を取り入れてしまったのです。
それは、メンバーのグループ加入にかかわる部分です。
AKB48の運営陣は、メンバーをオーディションで選んで研究生として加入させ、劇場公演に出演し実力が認められれば正規メンバーに昇格という、AKB48グループメンバーの誰しもが通る最初部分にまで話題性を取り入れてしまいました。
それが、AKB48グループドラフト会議や各都道府県の代表がメンバーとなるチーム8などです。
このような今までにない加入方法は、AKB48グループ全体のバランスを崩し、更には『成長を見せる』といったAKB48グループのコンセプトまでをも壊してしまいました。
そして、AKB48グループの象徴的な活動である『劇場公演』も、近年は完全にないがしろにされています。(特にAKB48)
劇場公演の新公演はここ5年で2つしか作られず(昔は1年に何個も新公演ができていた)、HKT48やSTU48は専用劇場すらない状況となっています。
また、AKB48はシャッフル型の公演ばかりでチームの存在意義がなくなりつつありますし、チーム別でドラフト会議をしたのに1年足らずで他のチームとして昇格するといった例もありました。
AKB48グループは、ここ数年このようなファンでも理解しがたいような状況が続いています。
これはファンの想定を崩していくスタイルで人気を得たAKB48グループの宿命とも言えますが、突拍子もないことはあまりせずに地道な活動を続けてきた乃木坂46が着実にファンを獲得し人気を得たことを考えると、正しい手法だったのかは極めて疑問が残ります。
おそらく、今後しばらくはAKB48が乃木坂46をCD売上で抜き返すことはできないでしょう。(選抜総選挙の投票権の入っているシングルは除く)
特にAKB48は握手会目的のCD購入が多く売り上げの初週に占める割合が圧倒的に多いらしいので、初週以降も売れ続ける傾向の強い乃木坂46に累計売上で勝つことはますます難しくなるかと思われます。
AKB48グループの人気回復方法は、オーディションなどのメンバーの加入部分を正常化することや劇場公演を大切にすることなど、ファン離れが起こりづらい体制を作ることです。
そもそもAKB48グループが人気が出たのは『成長を見せる』や『会いに行ける』というコンセプトだったのですから、たとえ時間がかかってもこの方法以外に人気回復の策はないと思われます。
もしこのような解決策を行わず、今後も話題先行、握手会優先といった路線を続けていけば、AKB48グループは『突然の解散』という最大の話題をファンに提供することになってしまうかもしれません。
以上、AKB48がなぜ乃木坂46に負けたのかについて考えてみました。
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コメント
こんなに綿密に分析をしているのに、著作者が分からないのが残念です。
これはぜひ、本にすべきです。
AKB48Gのファンや、坂道シリーズのファンは興味を示すでしょう。
後は、CDやDVDの売り上げ、コンサートの動員数や抽選倍率など、具体的数字が有れば、より説得力が出ると思います。