1三玉→3一金→9七銀にみる藤井聡太五冠の末恐ろしさ

頭脳系競技
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現在、里見香奈女流四冠の編入試験に関することや将棋界に感じる問題の記事を書き進めているのですが、その前に昨日行われた第93期棋聖戦第2局『藤井聡太棋聖vs永瀬拓矢王座』の一局があまりにも驚愕の展開だったので、このことについて書いていきたいと思います。


局面引用:第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局 藤井聡太棋聖vs永瀬拓矢王座 113手目

上記は、先手の永瀬王座が3二に金を打ち、王手飛車取りをかけた局面図です。
ここは、『飛車で金を取る(同飛車)→桂馬で飛車を取る(同桂馬)→玉で桂馬を取る(同玉)』という展開が無難なはずです。
これなら飛車を取られても金と桂馬を取り返せるので、駒割り的に藤井棋聖側の損はありません。
しかし、藤井棋聖は1三玉と玉を逃げる手を選択しました。
これでは飛車がタダで取られてしまい、実戦でも永瀬王座は飛車をすぐに取っています。
更に藤井棋聖は、再びタダで取られる9七に銀を打ち込むのですが、これが驚愕の一手でした。


局面引用:第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局 藤井聡太棋聖vs永瀬拓矢王座 116手目

この銀は取らなければ先手玉が詰んでしまいますし、取っても上部への逃げ出し口がなくなり、香車で取れば6七歩成、桂馬で取れば4八歩と飛車の横利きを止めれば詰めろ(何もしないと詰む状況)となります。
後手玉は金さえ渡さなければ詰まないので、詰めろを続けていけば藤井棋聖の勝ちとなり、勝負はこの一手でほぼ決する形となりました。
この展開はプロ棋士でも読みづらく、多くの人が驚きの声を上げています。
飛車と銀をタダで渡して勝勢になること自体が読みづらいですし、右上で攻防が展開されている状況で、いきなり左下の9筋に手を加えることは思いつきづらく、攻めるにしても大抵の人は6筋からの展開を考えるはずです。

ただ、藤井棋聖が1三玉と指したところで、永瀬王座は8八玉と逃げることができました。
こうなった場合、藤井棋聖はどうする予定だったのでしょうか?
飛車は働きの悪い1一にしか逃げようがなく、金も急所に残ったままになってしまいます。
飛車で金を取っても、桂馬で取り返された挙げ句その成桂が急所に残ります。
6七に歩が成ったとしても、1八飛車の横利きと上部への逃げ道があるので、そう簡単に先手玉を捕らえることはできません。
つまり、1三玉が悪手になる可能性が十分考えられたわけです。
9七銀を打っているのだから、当然、8八玉という早逃げの一手も読んでいたはずです。
にもかかわらず1三玉という手をを採用したということは、指し手の善悪ではない勝負術だった可能性が考えられます。
藤井棋聖は、あの局面で永瀬王座は玉の早逃げではなく飛車を取ってくると読んで、あえて悪手となりかねない1三玉を指したと考えられるわけです。
そして実際に、永瀬王座はほぼノータイムで飛車を取ってしまい、一気に勝負が決してしまいました。
五番勝負のタイトル戦に0-1で負けているという状況で、こんな勝負術を繰り出すなんて、藤井棋聖の末恐ろしさには驚愕するばかりです。

藤井棋聖が年齢と共に単純な将棋の強さだけではなく、このような勝負術も身に着けているとしたら、夢の八大タイトル独占もそう遠くない未来に実現するのかもしれません。

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