現在、中国の自治区となっているチベットは、中国人の大多数を占める漢民族の支配が強まってきているそうです。
ウイグル族の支配地域だった新疆ウイグル自治区はもっと悲惨な状況で、漢民族の移住がかなり進み、既に自治区内の住民40%以上が漢民族となっています。
このようなチベット自治区や新疆ウイグル自治区に対して中国政府が行っている同化政策について警戒心を持つ人も多く、日本でも主に中国を批判する保守層がこのことについて度々批判をしています。
しかし、日本も過去にアイヌ民族に対して同化政策を行っている事実があり、批判できる立場ではないという指摘もあります。
ということで、現在の中国が行っているチベット民族やウイグル族に対する同化政策と、かつての日本が行ったアイヌ民族に対する同化政策の違いについて調べてみたいと思います。
大和民族(和人)によるアイヌ民族の支配は13世紀から徐々に始まりました。
アイヌ民族に対する大和民族との同化政策が強まったのは18世紀ごろからで、現在ではアイヌ民族の正確な人数が把握できないほど同化が進んでいます。
ここまで同化が進んだ最大の理由は、アイヌ民族の人口が少なかったことにあります。
現在、チベット自治区に住むチベット民族は数百万人、新疆ウイグル自治区に住むウイグル族は1000万人近くが存在していますが、アイヌ民族は記録上最大26,800人しか存在していないので、どんなに多く見積もっても人口が10万人を超えたことはないと思われます。
このように、アイヌ民族はチベット民族やウイグル族に比べてかなり人数が少なく、このことが大和民族との同化が進んだ最大の原因となっています。
そもそもアイヌ民族は、大和民族との同化に対して明確な抵抗をしなかったという説もあります。
アイヌ民族による大和民族への反乱は、主に1457年のコシャマインの戦いと1669年のシャクシャインの戦いの2つなのですが、この争いはどちらもアイヌ民族が大和民族の支配に抵抗して起こした戦争とは言い難いようです。
コシャマインの戦いは喧嘩の延長として始まった戦いですし、シャクシャインの戦いは漁猟権をめぐるアイヌ民族同士の戦いから発展したものに大和民族が介入したものです。
また、シャクシャインの戦いの名前にもなっているアイヌ民族主導者のシャクシャインは、娘婿に大和民族を迎い入れているなど大和民族との同化に抵抗をしていなかった様子が伺えます。
更にアイヌ民族が明確な国を持っていなかったことも、大和民族との同化を早める原因に繋がったことと思われます。
チベット民族は独自の国家体系や宗教を持っていますし、ウイグル族も断続的に国家を持っていました。
しかしアイヌ民族は基本的に各集団単位で暮らし、各々で交易していただけなので国家と呼べるものはありませんでした。
そのためアイヌ民族には国という意識がなく、大和民族が行った同化政策に対して団結して抵抗することもなかったのです。
まとめると、アイヌ民族は、
人数:少ない
国家:ない
同化に対する抵抗:ほとんどない
ということです。
一方、チベット民族やウイグル族は、
人数:多い(チベット民族やウイグル族より人口の少ない国も多い)
国家:ある(少なくともチベットは国家と呼べるような体系が現在も残っている)
同化に対する抵抗:それなりにある
と、アイヌ民族と状況がかなり異なることがわかります。
日本(大和民族)がかつてアイヌ民族に対し同化政策を行ったことは事実であるため、現在の中国(漢民族)がチベット民族やウイグル族に対して行っている同化政策を強く非難できる立場にはありませんが、しかし内容をよく調べてみるとこの2つの同化政策には大きな違いがあることがわかりました。
以上、中国によるアイヌ民族やウイグル族への同化政策と、かつての日本が行ったアイヌ民族への同化政策を調べてみました。
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