最低時給で生活するということ

経済
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今年もまた最低時給の問題が話題になっています。
毎年この時期に中央最低賃金審議会が開かれ、最低時給の大まかな上げ幅が定められるのです。
そもそも最低時給は都道府県ごとに定められており、現在は東京の1,072円を頂点に青森県他9県の853円が最低の時給となっています。

では、ここで最低時給が853円である鹿児島県の郊外で、女性が1人暮らしをすると仮定した収入と出費のシュミレーションをしたいと思います。
まず、時給853円で1日8時間、月20日働くと

136,480円

の月給となります。
この月給から税金や社会保障費を計算すると

健康保険料6,874円
厚生年金保険料12,261円
雇用保険料819円
源泉所得税1,540円

となり、手取りは

114,986円

となります。
※税金や社会保障費の計算は『時給計算|手取り給料シミュレーション』を利用しました。

続いて出費の計算をします。
不動産情報サイト『SUUMO』で調べると、鹿児島県郊外の家賃はワンルームで4万円以下からあるようですが、管理費や駐車料金も込めると月45,000円程度はかかってしまうようです。
それ以外の出費は『みんなの生活費の内訳は?世帯人数別 1ヶ月の平均支出と家計の見直し方まとめ』で調べたところ、1人暮らし女性の生活費は、平均で食費が33,489円、光熱費が8,324円、通信費が8,531円、衣服・履物費が10,515円かかるとされています。
地方の郊外では車がないと生活ができないことが多く、自家用車は必須です。
乗るのは軽自動車にするとして、毎年の自動車税+車検代をギリギリで賄うには最低でも月5000円(2年間で12万円)の維持費が必要となります。
ガソリン代は勤め先から交通費が支給されると仮定し、買い物は出勤・退勤時に済ませればそんなにかかることはないでしょう。
トイレットペーパーや歯磨き粉などの生活に関わる日用品は、女性の場合7,000円から8,000円ほどかかるそうです。(女性は生理用品や化粧品などを購入するため日用品に対する出費が男性の倍以上になる)
その他、美容院代などが別途かかります。
以上の話をまとめると、

家賃(駐車場代込)45,000円
光熱費7,000円
通信費7,000円
食費30,000円
衣料・履物費7,000円
日用品費6,000円
車の維持費5,000円
ガソリン代1,000円
その他雑費7,000円

※最低時給で働くということで光熱費・通信費・食費・衣料・履物費、日用品費は平均値よりも低い数値で計算している。

これで収入114,986円に対し、出費115,000円でほぼ同額となります。
しかし、上記の出費には年間2万円程度の住民税の他、車の購入費、敷金礼金や引越代などを含めた住居費、家具や家電の購入費などを加味していない(最初から持っていると想定している)ので、現実的にこの収入では毎月数万円の赤字が出てしまうはずです。
出勤日数をより平均的な21日にして、更に残業や休日出勤をしたとしても、この赤字を補うことは不可能でしょう。

となると、生活費を削るしかありません。
家賃は既に最低限のレベルですし、通信費を下げて情弱(情報弱者)になってしまうと、この生活から抜け出すチャンスもなくなるので避けたいところです。
どうにか下げれそうなところは、光熱費、食費、衣料・履物費、日用品費などです。
まずは光熱費を抑えるためにエアコンの使用を中止し、水分の摂取は公園の水で済ますことにします。
食事は1日1食にして15,000円まで下げ、服は破れても着続けます。
化粧をすることは、もはや諦めましょう。
男性の場合は髪の毛を丸坊主にして自分で刈り、お風呂も濡れタオルで拭くだけにするなどといった対応が必要になってくるかもしれません。

これぐらい生活を切り詰めないと、最低時給で1人暮らしはできないということです。

そしてこれだけ切り詰めたとしても、上記の想定では遊戯費や交際費は0円なので、休みの日は家でボーっとしているか近くの公園で座っているぐらいしかできないのです。
さらに、このようなギリギリの生活をしながら病気に一切かからず医療費はなしという想定なので、手術を伴うような病気(虫垂炎など)になった場合は、もはや生き延びる道はないと思われます。

これが最低時給で働くということなのです!

どの都道府県でも、人間らしい最低限度の生活を行うには1,500円から1,700円程度の時給が必要との試算が出ています。
今年の最低賃金は過去最大となる41円を目安に上がることが昨日決まり、全国平均で最低時給が1,000円を超えると話題になっていますが、1,000円なんて時給はまるで話にもならない低賃金なのです。

日本の最低時給が低すぎる問題は今に始まったことではなく、何十年も前から起こっています。
しかし、ほとんどの企業は最低時給以上の賃金を払っているので、大きな社会問題にはなりませんでした。
言うなれば、企業が従業員の生活補償をしていたということです。
しかし、国民の生活を補償する努めは行政が行うべき話です。
過去の最低時給は主婦や学生のバイトに採用されるものだったのかもしれませんが、生活環境(結婚率の著しい低下)や就労環境(非正規労働者割合の増加)の変化を考えると、現在の最低時給は1人の人間が最低の生活ができる値にするべきなのではないでしょうか?

近年、最低時給の上がり幅が大きくなっていますが、物価も上がり消費税率も上がっている(細かいことを言えばレジ袋も有料化している)現状を考えれば、今の上げ幅では生活改善には至りません。(収入が増えるのと同レベルに出費も増えている)
経済的な問題もあるため最低時給を一気に上げれないことは理解しますが、もう少し上げ幅を増やしていかないと、秋葉原通り魔事件のような大きな問題が再び起こってしまうような気がしてなりません。

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