松本人志に性加害の疑惑があると週刊文春が報じ大きな話題となっています。
報道では、松本人志の後輩芸人にあたる小沢一敬、たむらけんじ、黒瀬純などが女性を用立てた飲み会が開催されたとされ、大きな批判を受けるとともに関連した芸人が芸能活動を休止する事態にまで発展しました。
事実のほどは不明ですが、松本人志が週刊文春を提訴したので裁判の中である程度の事実は明らかになることでしょう。
松本人志の件に関係なく、お笑い芸人の飲み会で、後輩芸人がナンパしてきた女性を先輩芸人が持ち帰ったなどという話はよく聞きます。
こういった行為については、先輩後輩という力関係は当然の上、番組のMCなどを務める大物芸能人にはキャスティングにも影響力を持つわけですから、パワハラが起こりやすい状況と言えます。
個人的な目的でのナンパだったら諦めるような事例でも、先輩芸人からの圧力や忖度があれば強引に行う可能性もあり、そこにはセクハラ的な問題も生じやすくなるかもしれません。
そして飲み会に行けばアルコールも入るわけで、セクハラという言葉では収まらないレベルの性被害が生まれる可能性も多分に起こり得る状況となります。
こういった類の飲み会やナンパが、今までお笑い文化の中で行われていたことは多くの人が知っている事実であり、芸人側も特に隠していませんでした。
つまり松本人志に関する問題の本質は事実関係の争いなどではなく、こういったお笑い芸人の文化を今の社会と照らし合わせて許せるかどうかの問題なのです。
週刊文春がそこまで考えているとは思わないですが、現実問題としてそうなっているのです。
特に芸人間の先輩後輩という関係性が強い吉本興業は、問題の温床になっているような気がします。
そもそもなぜ吉本興業の芸人に先輩後輩の関係が強くなるのかを考えた場合、そこには吉本興業の芸人に対する異常な賃金体系が見え隠れします。
吉本興業所属の若手芸人が、イベントなどの舞台で1日1000円や500円しか報酬がなく、電車賃を考えたらマイナスの収支になったなんて話を聞いた人も多いのではないでしょうか?
当然、そんな収入では生活できないのでバイトなどを行うのでしょうが、低賃金でも芸人の仕事をこなしていけないと地位の向上は望めません。
結果どうなるかというと、売れている先輩芸人に食事を奢ってもらうなどして生活の支援をしてもらうわけです。
業界内での力関係だけではなく現実的な生活まで売れている先輩芸人に依存し、またそういった関係が長年続くことで先輩と後輩という上下関係が絶対的に覆せなくなっているのが吉本興業の芸人なのです。
『成功すれば年収が数億を超えるような夢の世界だが、その下には生活もできないような賃金で活動しなければならない人が数多くいる』という構造は、夢を餌にした商売と言えます。
松本人志の問題が裁判で決着しても、この極端な格差社会がお笑い芸人の中にある以上、同じような問題は何度でも起こるのではないでしょうか?
というか、吉本興業の企業体質が問題視されたことは今回が初めてではありません。
そしてお笑い芸人や吉本興業に関わらず、旧ジャニーズ事務所も宝塚歌劇団も夢を餌に商売をすることがハラスメントの温床になっていると考えられます。
夢のある職種に一般社会以上の格差があるということは絶対悪ではないでしょうが、今の時代にどこまで許容されるのかは考えなければならない問題です。
例えば、『生活保護レベルの給料は与えるべきなのではないか?』とか『働いた時間(拘束した時間)に対しては少なくとも最低時給程度の報酬は与えるべきではないか?』などという意見もあることでしょう。
少なくとも、吉本興業の賃金体系は常識の範疇を逸脱していると思います。
さらに、この問題をもう一段階深く考えてみたいと思います。
強引な誘いやナンパを法規制の対象にしてしまえばいいと考える人もいるかもしれません。
実際に強引な誘いやナンパを法規制したら、結婚率や出生率が下がって今以上の少子化が起こるはずです。
規制を行えば、強引な誘いやナンパだけがキレイになくなるのではなく、萎縮が起こって許されるような誘いやナンパまでも大きく減るものと想定されます。
男性に誘われてもいいと思っている女性にとっては、男性と一緒になる機会が減るわけですから恋愛に発展する可能性も減ってしまうわけです。
会社内のセクハラ問題にしても、規制を強めていけば『会社内では異性と仕事以外の会話は一切しない』みたいな人が増えてしまうことは明らかです。
異性間の規制(社会的規制を含む)を強めれば、恋愛は起こりづらくなって結婚率が低下し、それに伴って出生率も低下して少子化になることが予想されます。
そして、これは日本のみならず現在の世界で実際に起っていることなのです。
特に日本の多くの問題は少子化に起因しているわけですから、あまり少子化を助長するような規制はしたくないと政府は考えていると思われます。
そう考えた場合、何が正しいのか非常に難しくなってきます。
つまり今回の問題について対応を迫られているのは、松本人志でもお笑い芸人でもなく私たちを含めた社会の側なのです。
何を許容して何を規制するべきか?
グレーな部分が減っていく社会の中で、我々は非常に難しい判断を迫られている気がします
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