流行から2年半…現在における新型コロナウイルスの危険度を再検証する

医学
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前回は新型コロナウイルスのワクチン効果について考えてみたが、今回は新型コロナウイルスの危険度を調べていこうと思う。新型コロナウイルスが中国で流行し始めたのが2020年1月ごろなので、流行から2年半過ぎたことになるが、現在のコロナ状況はどうなっているだろうか?

まずは新型コロナウイルスの重症化率(致死率)について考えていく。
新型コロナウイルスの危険性を調べる上で、1つの基準となるのが季節性インフルエンザとの比較だ。致死率で比較すると、季節性インフルエンザは0.1%以下と言われているが、新型コロナウイルス(オミクロン株)の致死率は、以前に書き示した通り0.32%程度と想定される。昨年末から使われはじめた特効薬の普及や、ウイルスの更なる変異でもう少し下がっているかもしれないが、それでも季節性インフルエンザの致死率より少なくとも3倍程度は高いと思われる。
重要なことは、季節性インフルエンザと違って大半の人がワクチンを打つなどの対策を行っているにも関わらず、このような結果を招いているという点だ。そう考えると、新型コロナウイルスの純粋な重症化率は季節性インフルエンザよりも遥かに高いと想定するべきだろう。

新型コロナウイルスが季節性インフルエンザと比べて危険な点はもう1つある。それは新型コロナウイルスが季節に関係なく1年中流行することだ。季節性インフルエンザも新型コロナウイルスと同じで免疫(抗体)の維持期間が短いが、夏に流行することがないため、冬に入る直前ぐらいに1回ワクチンを打てば済む。しかし新型コロナウイルスの場合は1年中流行するので、半年や4ヶ月ごとに常にワクチンを打ち続けなければならない。そもそもワクチンの効果が低いということも問題で、そのことについては前回の記事で書いた通りである。

続いて、新型コロナウイルスの感染力について考える。
新型コロナウイルスに関しては、マスクの着用や感染者の隔離、ソーシャルディスタンスと呼ばれる社会的距離の確保、手の洗浄や消毒など、あらゆる措置を講じたにもかかわらず世界中で爆発的に広がった。これは新型コロナウイルスの感染力が極めた高いからに他ならない。
各感染症における、1人の人が平均して何人にその感染症をうつすのかを示す『基本再生数』は以下の通りだ。

【基本再生産数】
季節性インフルエンザ:1.3~1.6
インフルエンザ(スペイン風邪):2~3
新型コロナウイルス(オリジナル):3.3
新型コロナウイルス(デルタ株):5.1
風疹:7~9
新型コロナウイルス(オミクロン株BA.1):9.5
水疱瘡:8~12
新型コロナウイルス(オミクロン株BA.2):13.3
麻疹:16~21
新型コロナウイルス(オミクロン株BA.4/BA.5):18.6

参照①(新型コロナウイルス):New Covid subvariants BA.4 and BA.5 are the most contagious yet – and driving Australia’s third Omicron wave
参照②(季節性インフルエンザ):強い感染力を持つ「はしか(麻疹)」の症状と感染経路、予防接種について解説
参照③(それ以外):細菌学総論 6 感染制御

現在、世界ではオミクロン株の亜種であるBA.4やBA.5と呼ばれるタイプのウイルスが流行し初めているが、これらのオミクロン株亜種は季節性インフルエンザの10倍以上の感染力があり、かつては子供の頃に必ず感染した(現在はワクチン接種で対応)水疱瘡や麻疹を超えるような感染力となっている。これは、新型コロナウイルスの感染を今後避けることがほとんど不可能だと言っているに等しい。
一方で、水疱瘡も麻疹も人類は克服しているのではないかと考える人もいるだろう。ただ、それは水疱瘡や麻疹は免疫がほぼ一生涯続くことによる効果で、1度感染するかワクチンを打てば、それ以上に感染が広がっていくことはないからだ。しかし免疫効果が数ヶ月しか続かない新型コロナウイルスは、何度でも感染してしまい何時まで経っても危険性を維持し続けることになる。

結論として、新型コロナウイルスは季節性インフルエンザとは感染力が比べ物にならないほど強く、致死率も3倍程度は高いと想定される。そんな感染症が季節に関係なく1年中続いているのが現在の世界なのである。

ここ最近、新型コロナウイルス(オミクロン株)の危険度が季節性インフルエンザと変わらないと主張し、マスクを外すキャンペーンを行う人や、実際に大半の人がマスクを外した国も多い。しかし上記のように1つ1つ調べていくと、新型コロナウイルスは季節性インフルエンザとは別次元の危険性を有していることが分かる。
そんな新型コロナウイルスを人々が恐れなくなった理由は、慣れによるものと思われる。この慣れは、新型コロナウイルスに感染することに対する慣れ、新型コロナウイルスに感染した人が死亡することに対する慣れなどで、決して良い慣れではないだろう。少し状況が良くなったように見えるのも、アメリカやヨーロッパなどの大規模な感染(感染爆発)を起こした地域で、新型コロナウイルスに弱いと思われる人が既に大勢亡くなり死亡率が下がっているだけかもしれないのだ。これは決して喜べる状況ではない。

新型コロナウイルスの状況が改善するには、ウイルスがもう1レベル重症化率の低いものに変異するか、効果の高い特効薬が普及するなどといった大きな状況変化が必要である。しかし、現状そういった状況の著しい変化がすぐに起こることは期待できないようだ。
もちろん日常生活を回復させなければならないが、状況の変化が望めないのであれば、危険なウイルスがあるという前提で生活様式を変える必要があるのかもしれない。人類の歴史をたどれば、生活様式なんていくらでも変わっているのだから、今まで通りの生活を取り戻すことに拘るよりも、新型コロナウイルスがあるという前提の新しい生活様式を模索することも必要だろう。マスクをすることや、熱がある場合は人前に出ないようにすることなど、感染症を必要以上に広げないようにする新しい価値観のもと、人類は生きていくことを迫られているのかもしれない。

以上、現状の新型コロナウイルスの危険度を考えてみたが、今回の記事で新型コロナウイルスについて書くことは終わりになってほしいものだ。

最近になって、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザを比較して様々な意見を言う人がとても増えているので、ここで新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの比較についての補足を追記する。

まず、新型コロナウイルスが流行して2年、季節性インフルエンザはほとんど消えてなくなったという現実がある。これがマスクの着用やソーシャルディスタンス、手の消毒などという様々な新型コロナウイルス対策による効果なのか、あるいは近いウイルスには同時に感染しないという『ウイルス干渉』による効果なのかハッキリは分かっていない。ただ、いずれの作用にせよ、新型コロナウイルスの感染力が季節性インフルエンザよりも遥かに強いということになる。

それともう1つの大事なことは、季節性インフルエンザは名前の通り季節性があるという点だ。
以下は、新型コロナウイルスが流行する前の5年間における、東京都の季節性インフルエンザ感染状況を示したグラフである。


画像引用:都内でインフルエンザの流行開始 – 東京都

季節性インフルエンザは、1月後半から2月前半ぐらいが感染の主なピークで、早いと言われる年でも大抵は12月からの流行だ。いずれにせよ、季節性インフルエンザは暑さに弱いため3月に入ると流行は一気に収まっていく。つまり、季節性インフルエンザは放っておいても1ヶ月程度すれば勝手に収まっていくことがほとんどで、2ヶ月経てばほとんど消えてなくなっているわけだ。そのため人為的に対応してもしなくても、得られる結果に大差は出ない。
一方、新型コロナウイルスには季節性がなく、いつでも感染が拡大してしまう可能性がある。そのため、人為的対応の必要性は自ずと高まるわけだ。

また、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの感染者数を比べ、季節性インフルエンザも毎年かなりの感染者が出ているのに新型コロナウイルスのような対策はしていないと主張する人もいるが、季節性インフルエンザで発表される感染者数は推計値でしかない。更にこの推計値が過大であるとして、2018/19年シーズンから推計方法が変更されている。2019/20年シーズンからは新型コロナウイルスの影響で季節性インフルエンザの感染推移が従来と違う動きをしているから、まともに推計されたことは1シーズンしかないわけだ。
一方の新型コロナウイルスはPCR検査及び抗原検査の陽性者数である。しかも日本の検査体制は他の先進国と比べ脆弱であることが広く知られている。過大とされる季節性インフルエンザの推計値と、脆弱な検査体制とされる新型コロナウイルスの陽性者を同じ感染者数として比較することは、あまりにナンセンスだ。

以上のことを踏まえ、季節性インフルエンザは新型コロナウイルスと比較すると感染力が弱く感染の時期が冬に限られることから、危険度が相当下がることは間違いないと考えられる。
現在、公的機関も含め、新型コロナウイルスの危険度を季節性インフルエンザと同等のような扱いで論ずる人も多くなっているが、本文でも書いている通り、新型コロナウイルス(オミクロン株)は致死率についても感染力についても感染力の維持期間についても季節性インフルエンザより高く、トータルの危険度で言えば比較対象になるレベルではないと考えるべきだろう。

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