新型コロナウイルスに感染した際の重症化率は、国によって大きな差があることが分かっている。
先日、NHKのBS1スペシャルでも放送していたが、このことに関する様々な論文が発表され、各国で解明を進めているそうだ。
その理論については下記で考察をしていくが、まずは各国による新型コロナウイルスの『感染者数』、『死者数※』、『感染率(100万人あたりの感染者数)』、『死亡率(感染者に対する死亡率)』のデータを示す。
※重症化率のデータがなかったので、死亡率を重症化率の代わりとする。
国名 | 感染者数 | 死者数 | 感染者数 (100万人あたり) | 死亡率 |
---|---|---|---|---|
アメリカ | 24809841 | 411520 | 74711 | 1.66 |
メキシコ | 1668396 | 142832 | 12865 | 8.56 |
ブラジル | 8575742 | 211511 | 40187 | 2.47 |
アルゼンチン | 1819569 | 46066 | 40057 | 2.53 |
ペルー | 1073214 | 39044 | 32302 | 3.64 |
イギリス | 3466849 | 91470 | 50921 | 2.64 |
スペイン | 2370742 | 54173 | 50695 | 2.29 |
イタリア | 2400598 | 83157 | 39737 | 3.46 |
ドイツ | 2071473 | 49244 | 24680 | 2.38 |
スウェーデン | 533265 | 10591 | 52621 | 1.99 |
フィンランド | 41166 | 633 | 7423 | 1.54 |
ウクライナ | 1172038 | 21258 | 26889 | 1.81 |
ロシア | 3633952 | 67220 | 24895※ | 1.85 |
カザフスタン | 171232 | 2349 | 9060 | 1.37 |
オーストラリア | 28740 | 909 | 1120 | 3.16 |
ニュージーランド | 2267 | 25 | 453 | 1.10 |
トルコ | 2399781 | 24328 | 28286 | 1.01 |
サウジアラビア | 365563 | 6338 | 10411 | 1.73 |
イラン | 1348316 | 57057 | 15940 | 4.23 |
パキスタン | 524783 | 11103 | 2351 | 2.12 |
インド | 10596442 | 152754 | 7637 | 1.44 |
バングラデシュ | 529687 | 7950 | 3199 | 1.50 |
インドネシア | 939948 | 26857 | 3417 | 2.86 |
タイ | 12653 | 71 | 181 | 0.56 |
マレーシア | 169379 | 630 | 5197 | 0.37 |
シンガポール | 59197 | 29 | 10075 | 0.05 |
日本 | 339774 | 4647 | 2648 | 1.37 |
台湾 | 870 | 7 | 36 | 0.80 |
香港※ | 9798 | 166 | 1301 | 1.69 |
韓国 | 73518 | 1300 | 1433 | 1.77 |
ナイジェリア | 113305 | 1464 | 542 | 1.29 |
ケニア | 99308 | 1734 | 1825 | 1.75 |
※ロシアは実際の死亡者数が3倍以上あると国も認めている
※中国のデータを使いたかったが、データに明らかにおかしいところがあるので香港を採用
ネアンデルタール人の遺伝子による影響説
新型コロナウイルスによる重症化率にネアンデルタール人の遺伝子が関わっているのではないかという理論が、昨年世界中で話題となった。
ネアンデルタール人は現生人類に最も近い絶滅人種で、一部で現生人類と混血が起こっていたため、現在でも人類の中にはネアンデルタール人の遺伝子が残っているのだ。
以下が、そのネアンデルタール人の遺伝子を持つ人の割合と住む地域である。
この画像によると、ネアンデルタール人の遺伝子を持つ割合が多いのはインド周辺の南アジアである。しかし国別の感染データにおいて、南アジア人の死亡率が特別高いということはない。これは明らかな矛盾といえるだろう。
ネアンデルタール人の遺伝子を持つ割合が少ないとみられる原住民の血が濃いペルーの人と、ネアンデルタール人の遺伝子を持つ人が多いとみられる西洋人が多く住むアルゼンチンの人で、死亡者の割合が逆転していることも矛盾を感じるざるを得ない。
東アジアで2019年に新型コロナウイルスが流行していた説
これは京都大学の上久保靖彦教授が発表した理論で、2019年に弱毒性の新型コロナウイルスが中国から周辺国に広がり、現在の強毒性の新型コロナウイルス対し東アジア人は抗体に類するものを既に獲得しているため、重症化しづらいという説だ。
以下が、2019年に中国人がビザを獲得した国のランキングである。
引用:訪日中国人の主目的は体験型消費。雪見とウインタースポーツ、着付け体験、グルメ巡りが人気上昇。 – trip.com
上記のデータによると、全体の25%を占める日本を筆頭に新型コロナウイルスによる死亡率の低い国が上位に並んでいる。そのため、この理論は一見正しいようにも思えるだろう。
しかし、中国本土人が多く訪れながらも上記のデータに含まれない地域があるのだ。
それは香港で、香港へ訪れる中国人(中国本土人)の数は日本と同レベルの水準となっている。にもかかわらず、香港の新型コロナウイルス死亡率はアメリカと同程度で、こちらの理論も矛盾を感じる点があるように思える。
他のコロナウイルスとの交差免疫説
これは上久保教授の理論に似ているが、通常の風邪(主に冬の風邪)の原因になる(新型コロナウイルス以外の)コロナウイルスに感染した人が、新型コロナウイルスに対しても免疫に類するものを得ているのではないかという理論だ。
これはあり得る話なのかもしれないが、元来のコロナウイルスに感染した人のデータがないので、真相は分かりようもない。
マスク着用による影響説
この理論は、マスクをしていると新型コロナウイルスが体内に微量ずつ入っていくため、徐々に免疫を獲得できるというものだ。
これもあり得るのかもしれないが、いかんせん国別のマスク着用率データがないので調査のしようはない。
生活様式による影響説
これはマスクの例と逆で、西洋人はスキンスップ(握手、ハグ、フレンチキスなど)が多くウイルスの暴露量が増えるため重症化しやすいという考えだ。
これもあり得る話だと思う。
感染者の多さ説
感染者が多くなると医療現場が混乱(医療崩壊)するため、死亡率が上がるのた当然だろう。
これは分かりやすい理由であり、実際に起っていると想定される。
医療レベル説
国により医療のレベルに差があるため、当然、このことが原因で死亡率に差は生じる。
ただし医療レベルを数値化することが難しいため、具体的な影響度合いは分からない。
結論
以上で挙げた理論は、どれもそれなりに納得出来るに見える一方で、矛盾点があったり明確なデータがなかったりもしている。
そもそも、国によって新型コロナウイルスの重症化率(死亡率)に差が出ることに1つのハッキリとした理由などはなく、複合的な理由がいくつも絡み合っているのだろう。それを1つの理論に固執して原因追求しようとしても意味はないと思われる。
メキシコとシンガポールでは死亡率に200倍近くもの差が生じているが、このことを1つの理論だけで証明することは不可能だろう。おそらく、このことが明確になるのは数年以上先のことで、今は議論をしても大きな意味はないのかもしれない。
つまるところ、新型コロナウイルスに対しては、今出来うる対策をしっかりとやることとワクチンを早く摂取することに尽きると個人的には考える。
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コメント
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