麻雀の発祥地である中国では、その地その地のローカルなルールで麻雀が行われています。
そんな状況を打開するため、国が主導して麻雀のルールをまとめ国際ルールとして発表したものが、現在の日本で中国麻雀(中国麻将)と呼ばれるルールの麻雀です。
中国麻雀にリーチやドラがない(抜きドラにあたる花牌はある)ことは前回考えたアルシャル麻雀と同じですが、役の数はアルシャル麻雀とは逆でリーチ麻雀よりも多くなっています。
日本で普及している現在のリーチ麻雀の役は40前後ですが(役の扱いに若干の揺らぎがあるため確定した数にはならない)、中国麻雀は81種もの役があるのです。
三色同順ならぬ『二色同順』
3種の数牌で一気通貫を作る『三色通貫』
上下の基準がない牌のみで作るで『推不倒』
など、麻雀の手配において何らかの法則性のあるものは全て役になっているような感じで、何の役もないという役(無番和)すらあるほどです。
暗槓や門前のロンも1つの役として採用されています。
その他、中国麻雀の役一覧は以下より。
これに加え、喰い平和(鳴いた平和)、待ち変え、フリテンもOKなので、日本人の感覚からすると、すぐ役が出来る運要素の高い麻雀だと感じるかもしれません。
しかし、そうとも限らないようです。
まず、中国麻雀は花牌(日本でいう抜きドラに相当)の点数は除き、役に定められた点数が8点以上にならないと和了ることは出来ないという制限があります。(8点縛り)
平和やタンヤオや2点で、部分役なども多数あるため8点のクリアは難しくはありませんが、それ以上に役が多いということは役の複合や変化の可能性が高く、中国麻雀では出来るだけ高い手になるように手牌進行する必要があるのです。
中国麻雀には満貫や跳満のような概念がなく出来た役はひたすら加点していくので、8点以上の役が出来たとしても更なる加点を目指すことが求められますし、リーチがないため、その行為は局が終わるまで続きます。
役の重なりという点について、リーチ麻雀では理不尽な部分があると思うので実例を示して説明しましょう。
1例目は、清一色で四暗刻をテンパイしドラが暗刻で乗ったときの話です。
役と翻数は、
清一色6翻
対々和2翻
三暗刻2翻
ドラ3翻
となるので、ロンでも数え役満(13翻)が成立します。
ツモならもちろん四暗刻なのですが、ロンでも数え役満が成立する以上、ツモならダブル役満(四暗刻+数え役満)でもいいのではないかと思えます。
続いては、『⑨⑨⑨東東白白白中中中発発』という手配で大三元と四暗刻のチャンスになったのですが、これはよく見ると
小三元2翻
混一色3翻
混老頭2翻
対々和2翻
三暗刻2翻
役牌×3翻
の14翻と、翻数的には数え役満の条件もクリアしてます。
整理すると、
東のロンなら数え役満
発のロンなら大三元
東のツモなら四暗刻
発のツモならダブル役満(大三元・四暗刻)
なのですが、発のロンや東のツモも数え役満の分を含めてダブル役満でいいように思えますし、発のツモならトリプル役満(大三元、四暗刻、数え役満)でもいいように思えてくるわけです。
いずれの役満の絡んだ極端な例ですが、中国麻雀ではこういった例でも全ての役が加点されるので手は高くなりますし、出来た役が考慮されないという納得し難いこともありません。
以上のように、中国麻雀では役の重なりや変化を含めて高い手を目指す手役作りに重点が置かれており、速度重視でテンパイしたらリーチで手を固定してしまうことが一般的な日本のリーチ麻雀とは一線を画すものとなっています。
現在のリーチ麻雀において、リーチという役はかなり強力です。
まずリーチそのものが1翻アップですし、一発や裏ドラなどといった特典も受けられます。
更に他者への脅し効果が強く、リーチを受けて降りを選択することも多々あります。
そのためリーチ麻雀では、出来るだけ早く面前でテンパイしリーチすることが求められるのです。
実際の麻雀プロには高打点派の人もいるでしょうが、成績が公開されているネット麻雀の上位者は総じて速度重視で高打点派の人など皆無に等しく、現在(赤ドラあり)のリーチ麻雀は極めて速度重視の傾向が強くなっています。
これは、リーチに加えドラ(裏ドラ以外のドラ)の存在も大きいのかもしれません。
近年は赤ドラも当たり前で手配にドラが入っている確率が上がっていますから、リーチだけでも強力な手になりかねず、他者から見るとリーチはひたすらに恐怖なのです。
以上のように、現在のリーチ麻雀は速度重視の傾向が強くなっているわけですが、速度重視になればツモ回数が減るため配牌運やツモ運の要素が強くなってしまうことは以前の記事で示した通りです。
牌効率にも複雑な部分がありますし、役を完成させることにも技術が必要ですが、配牌やツモなどの運は、それらの技術を凌駕するほどの効力があります。
前回考えたアルシャル麻雀でも、リーチとドラが現在のリーチ麻雀の運要素を上げる要因になっている可能性があると指摘しましたが、中国麻雀からも同じ問題が見えてきました。
中国麻雀と日本のリーチ麻雀には、もう1つ大きな違いがあります。
それが出和了り(ロン和了り)時の支払い方法です。
リーチ麻雀の場合、ロン牌を捨てた人(放銃した人)の責任払い(1人払い)ですが、中国麻雀の場合は放銃した人は完成した役の点数を支払い、更に他の2人にも8点の支払義務が生じます。
中国麻雀のツモ和了りは単純に完成した役の点数を他の3人からもらうので(中国麻雀には親と子の概念がない)、ツモ和了りのほうがかなり点数が高くなり、放銃の際にツモ和了りとほぼ同じ点を1人で支払うリーチ麻雀と比べ放銃のリスクが低いわけです。
この支払いルールの違いにより、日本の麻雀は『振り込まない技術=他者の手配を読む技術』が発展してきました。
この読みの技術は運よりも圧倒的に実力が支配する部分であり、日本に麻雀のプロが存在し、麻雀に一定の競技性を確保している部分でもあります。
そもそもフリテンのルールがない時点で、中国麻雀は捨て牌を読むことにあまり意味がなくなっていると言えます。
台湾の麻雀などは捨て牌を適当に真ん中に捨て、誰が何を捨てたのかもよく分からない状態となり捨て牌を読むという発想すらないようなのです。
最後に、以下で示す中国の麻雀に関するニュースを御覧ください。(画像だけでも、かなり強烈です)
これらのニュース及び画像を見る限り、中国における麻雀は日本のトランプに近い遊戯的なものとして広く受け入れられ、競技性はあまり考慮していないように感じます。
日本の麻雀はギャンブルに特化しているためか一般層にはそこまで受け入れられておらず、公園で人々が麻雀をしている姿を見ることはまずありません。
以上、中国と日本の麻雀は、ルールはもとより文化的な部分からかなり違いがあるようです。
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