2019年、今年で『平成』が終わり元号が変わるわけですが、このことは海外でもそれなりに話題になっています。
元号が変わるということは天皇が変わるということで、今回は天皇についての話をしようと思いますが、そもそも海外の人は、日本の『天皇』に対しどのようなイメージをもっているのでしょうか?
海外でよく知られる日本人として、未だに第二次世界大戦終了時の天皇だった昭和天皇が挙げられるように、外国人にとって天皇は”戦争の責任を負うような権力者”だと思っている人も多く、少なくともかつてはそういった権力を有していたと考える人が多いようです。
しかし実際の昭和天皇はほとんど権力を有しておらず、それ以外の天皇も同じく権力をもってはいませんでした。
ここで天皇の歴史を簡単に説明します。
天皇家が日本の歴史に登場するのはおよそ1500年前で、神話を含めれば更に1000年以上の歴史があります。
ただし1500年前以前の伝承はあくまで神話であり、現実的には1500年前から天皇の歴史は始まったと言えるでしょう。
その後、天皇家は1500年に渡って日本に君臨し続けている王家であり、これは現存する王家では最長となります。
しかしその1500年間の内、ほとんどの期間で天皇は実質的な権力を有しておりません。
天皇は西洋人がイメージする国王のような存在とは違うのです。
江戸時代以前の庶民は、ほとんど天皇のことを意識すらしていなかったと思われます。(天皇が住む近くの場所などは別だが)
江戸時代では、偉い人と言えば各地域の大名(お殿様)、それをまとめる将軍(徳川家)がその総代といった感じで、今のようなメディアが発達していない時代に天皇に関する知識を手に入れるのは難しく、庶民の中に天皇と存在が強く入り込んでいたとは言い難い状態だったと思われるのです。
天皇が権力を持っていたのは、歴史に登場した後のごく僅かな期間のみであり、しかもそのごくわずかな期間ですら、曽我氏などに代表される豪族が実権の大半を握っていました。
その後の平安時代は、藤原氏に代表される公家が実権を握り、800年ほど前に武家政権が誕生してからの天皇は、ほとんど象徴的な存在となっていきます。
そしておよそ500年前から始まった戦国時代から明治維新が起こるまでは、天皇は表舞台に出てくることすらなくなってしまいました。
戦争責任の問題でクローズアップされる明治から太平洋戦争終結までの時期(大日本帝国時代)も、天皇は実際ほとんど政治に参加していません。
そして現在の天皇は、明確に象徴として存在しています。
1500年の天皇家の歴史において、表舞台に登場した天皇はほんの数人程度しかおらず、日本人から見ても天皇は不思議な存在と言えるのです。
平清盛、源頼朝、足利義満、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康など、日本の歴史の中で非常に権力欲の強い将軍たちが生まれていますが、そのような将軍たちですら天皇家を潰そうとはしませんでした。
むしろ天皇に任命されたということを権威付けの後ろ盾として、自分たちの身分を保っていました。
これは世界的にも稀な歴史で、天皇家が長く継続している最大の理由となります。
フランスの皇帝であるナポレオン(1世)が、自身の権威を高めるためにローマ法王を利用したことがありましたが、日本の将軍と天皇はこの関係に近く、実際に天皇の存在は宗教的な側面が強い存在と言えます。
しかし、天皇はローマ法王のような完全に宗教的存在というわけでもありません。
天皇家の先祖神である天照大御神を祀るのは伊勢神社ですが、天皇は伊勢神宮の宮司というわけでもなく伊勢神宮には『祭主(まつりのつかさ)』という最高神職者が別にいます。
このように、天皇はほとんど存在自体に意味があるような感じで、外国人に説明するのがとても難しいのです。
中国文化圏の人たちなら、存在そのものに意味がある『帝』的な感覚はある程度わかるかと思います。
そもそも天皇という言葉自体が中国からの影響を受けて生まれたものと思われるので、中国文化圏の人は天皇の存在をある程度は理解しやすいことでしょう。(天皇と呼ばれる前の日本の王は大王(おおきみ)と呼ばれていた)
しかし西洋の人などは、王=権力者と見なしがちで、象徴的な存在である天皇をなかなか理解できないようです。
もちろん、西洋で残っている王室も今はほとんど象徴的になっているわけで、現在も王室のあるイギリス、スペイン、オランダなどの国の人は、象徴的存在の天皇を理解しやすいのでしょうが、1500年のもの間ほとんど権力を握らずに存続し続ける天皇は、やはり理解に苦しむようです。
以上、平成最後の年に天皇について考えてみましたが、結局のところ、日本の天皇については言葉で説明するのが難しく、日本人ですら天皇の歴史や存在意義を理解している人はごく僅かしかいないのが実情と言えるでしょう。
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