動物は誕生しては絶滅するを繰り返し、更に現在は、人間の活動が種の絶滅を含む地球環境にまで影響を持つようになりました。
そんな中、今もっとも絶滅に瀕している動物が『シャンハイハナスッポン』というスッポンです。
photo credit:Rùa Đồng Mô by Phuongcacanh at Vietnamese Wikipedia
シャンハイハナスッポン/Yangtze giant softshell turtle
- 【最大甲長】
- 104cm
- 【学名】
- Rafetus swinhoei
- 【分類
- カメ目スッポン科ハナスッポン属
- 【生息域】
- ドンモー湖(ベトナム)
シャンハイハナスッポンは、甲長1m程度にまで成長する世界最大クラスのスッポンで、また世界最大クラスの淡水カメでもあります。
この巨大亀・シャンハイハナスッポンですが、2018年8月現在、3匹しか生息しておらず、地球上でもっとも絶滅の危機に瀕している動物としても知られているのです。
現在の野生種は、ベトナムの主要都市であるハノイから約40km西の場所に位置するドンモー湖に、オスと思われる個体が1匹生息しているだけとされ、残りの2匹(オスとメスの1匹ずつ)は、中国の蘇州動物園で人工的に保護している個体となっています。
かつては、ハノイの街中にある小さい湖沼『ホアン・キエム湖』にも1匹のオスのシャンハイハナスッポンが生息していたのですが、2016年に亡くなってしまいました。
↓シャンハイハナスッポンの死亡を伝えるニュース
このシャンハイハナスッポン、かつては中国の東部からベトナムの北部まで広く分布していたそうです。
それが3匹にまで激減してしまった原因は、いくつか考えられます。
最大の原因と思われるのは乱獲で、シャンハイハナスッポンは食用や漢方薬として1960年代までに多くが捕獲されてしまいました。
人間が他の種を絶滅に追いやる例として、乱獲は数万年前から起こっている現象です。
それ以外にも、ダム建設や河川改修による環境変化も影響があったことでしょう。
泥の中に住むスッポンは河川の状況変化にとても敏感で、人間の治水行為が絶滅に直結するほどの問題となってしまいます。
また、生活排水や工場排水などによる水質汚染なども原因になっていると考えられます。
しかし、3匹にまで減ってしまった種を復活させるのは相当難しく、効果はほとんど出ていないのが現実です。
では、現状考えられるシャンハイハナスッポンの復活方法について、1つ1つ考えていきましょう。
人工繁殖
蘇州動物公園にいるシャンハイハナスッポンはオスとメスなので、普通に考えられるのが人工繁殖で数を増やしていく方法が考えられます。
しかし、中国では野生のシャンハイハナスッポンの捕獲例が1972年以降なく、現在の飼育個体も45年以上前に捕獲されたものとされています。
つまり、現在存在しているシャンハイハナスッポンは、もうかなり年老いていると考えられるのです。
そのため、たとえ人工的であっても繁殖は難しいと考えられ、またそもそも1つのつがいだけで数を増やしていくのは、近親交配などの影響がもろに出てくるため相当問題があると考えられます。
新しい個体を探す
以前記事にしたロードハウナナフシは、絶滅と認定された約80年後に再発見され、現在はかなり個体数を増やしています。
シャンハイハナスッポンは、街中にある面積たった0.12km²(東京の不忍池とほぼ同じ大きさ)のホアン・キエム湖にいたぐらいですから、しっかり探せば別の場所にもいそう気もします。
特にスッポンは泥の中に潜むため見つかりづらく、生存している可能性は十分なるのではないかと個人的には思うのですが、ただ、シャンハイハナスッポンは前記したように1m程度の大きさになる巨大亀なので、生存していたら既に見つかっていると考えたほうがいいのかもしれません。
クローンなどの科学技術を利用する
クローンなどの最先端科学を利用すれば、シャンハイハナスッポンの復活は可能かもしれませんし、遺伝子や細胞などの科学的発展を踏まえれば、いずれは可能になると考えるほうが自然でしょう。
しかし、この点には倫理的な問題が発生します。
種が絶滅するということは、ある意味では自然な現象と言えるため、それを復帰させる行為は人のエゴでしかないとも考えられるのです。
ホアン・キエム湖に表れたシャンハイハナスッポンを見るため人が集まっている様子。(何かのイベントか?)
この動画は日本人の方が撮影されているようです。
こちらも同じホアン・キエム湖の個体で、人のすぐ近くの陸地にまで上がってきています。
それにしても大きいですね。
こちらは、ホアン・キエム湖の上空を撮ったドローン映像です。
ホアン・キエム湖がいかにハノイの街中にあるかがわかるかと思います。
こちらは、2008年に湖南省の長沙動物園から蘇州動物園へ、メスのシャンハイハナスッポンが移送されたときの映像です。
こちらは、近縁種のメソポタミアハナスッポンの映像です。
近縁種がいるということは、人工的な繁殖の際に代理母のようなことが可能なのかもしれません。
【2019年4月16日追記】
蘇州動物公園にいたメスのシャンハイハナスッポンが死んでしまったそうです。
記事の中身を読むと、老齢のメスの個体に対し強引な人工授精がされたそうで、死んでしまったというより人間の手によって死に追いやったという表現のほうが正しいのかもしれません。
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