昨年に続き、今年も干支(十二支)に対応する記事を元日に書きました。
この十二支は主に漢字文化圏(東アジア)で使用され、日本では年賀状に描く絵としてもよく知られています。
しかし、この十二支は動物学的に気になる点があるので少し考えていきたいと思います。
まずは、十二支に採用されている動物たちの紹介です。
子(ネズミ)
- 【分類】
- 哺乳網
- 齧歯目(ネズミ目)
- ネズミ上科
ネズミは、人類が農業を始めて以降、作物を食べる動物として人間の生活に密着し続けています。
※画像はハツカネズミ
丑(ウシ)
- 【分類】
- 哺乳網
- 鯨偶蹄目
- ウシ科
- ウシ族
ウシは農耕に欠かせない動物として古くから利用され、乳(牛乳)はそのまま飲む他、様々な加工食品(チーズやヨーグルトなど)にもされます。
寅(トラ)
- 【分類】
- 哺乳網
- 食肉目(ネコ目)
- ネコ科
- ヒョウ属
トラは、東アジアに生息する最強動物の1種として広く知られています。
卯(ウサギ)
- 【分類】
- 哺乳網
- 兎形目(ウサギ目)
- ウサギ科
ウサギは、長い耳が特徴の身近な動物です。
辰(リュウ)
- 【分類】
- 空想生物網
- 動物由来目
- 中国神話科
- リュウ属
リュウは、セイヨウドラゴン属のドラゴンと共にリュウ属(ドラゴン属)に分類されていたこともありましたが、最近の研究により両種が無関係(似ているのは収斂進化の結果)であることが分かり、分類法に大きな改変が行われました。
巳(ヘビ)
- 【分類】
- 爬虫網
- 有鱗目(トカゲ目)
- ヘビ亜目
ヘビは多くの人に忌避される動物である一方、脱皮をすることから再生の象徴として崇められることも多くなっています。
※画像はヤマカガシ
午(ウマ)
- 【分類】
- 哺乳網
- 奇蹄目(ウマ目)
- ウマ科
- ウマ属
ウマは荷物や人を運ぶために古くから家畜化され、近年はギャンブルの道具にもされています。
未(ヒツジ)
- 【分類】
- 哺乳網
- 鯨偶蹄目(目)
- ウシ科
- ヒツジ属
ヒツジはヤギやブタと同様にイヌに次ぐ古い家畜動物で、乳の利用の他、毛が布団や衣服などとして利用されます。
申(サル)
- 【分類】
- 哺乳網
- 霊長目(サル目)
- 狭鼻小目
サルは生物学的に人間に近い動物で、昔話などでは人間の代わりに主人公として登場することも多くなっています。
※画像はアカゲザル
酉(ニワトリ)
- 【分類】
- 鳥網
- キジ目
- キジ科
- ヤケイ属
ニワトリは鳥類として最も早く家畜化された動物で、毎日産む卵が食品として広く利用されています。
戌(イヌ)
- 【分類】
- 哺乳網
- 食肉目(ネコ目)
- イヌ科
- イヌ属
イヌは人間が初めて家畜化した動物で、人類の最高の共と言われています。(オオカミを家畜化してイヌとなった)
※画像は中国原産のペキニーズという犬種
亥(イノシシ)
- 【分類】
- 哺乳網
- 鯨偶蹄目
- イノシシ科
- イノシシ属
イノシシは、家畜としてはイヌに次ぐ歴史をもつ動物です。(家畜種はブタと言われる)
動物には昆虫や軟体動物なども含まれますが、さすがにここまで含むと話が大きくなりすぎるので、十二支は脊椎動物に限定して考えたほうがいいでしょう。
脊椎動物の種類数は以下の通りです。
魚類 :33,000種以上
両生類:7,000種以上
爬虫類:10,000種以上
鳥類 :10,000種以上
哺乳類:6,000種以上
新種が常に発見されていたり、種の認識に揺らぎがあったりするので確定的なことは言えませんが、脊椎動物の種類は大体これぐらいとなっています。
これを正しく12に分配すると、
魚類 :6種
両生類:1種
爬虫類:2種
鳥類 :2種
哺乳類:1種
になり、十二支は大体サメ・タイ・ウナギ・コイ・ナマズ・アユ・カエル・トカゲ・ヘビ・トキ・コウライウグイス・ネズミみたいな感じになります。
選ばれた動物の解説をすると、まずサメは軟骨魚類の代表で、タイは海魚の代表です。
アユ、ウナギ、コイ、ナマズは東アジアで馴染みのある魚類から選びました。
両生類を代表する種は普通に考えてカエルとなり、爬虫類は種類の多さからトカゲとヘビが当然選ばれます。
トキは東アジアを代表する鳥で、もう1つの鳥であるコウライウグイスは鳥類の半分以上を含む最大派閥となるスズメ目からの選出です。
哺乳類も同じ理由から種の多いネズミを選びました。
これで新しい十二支の完成ですと言いたいところですが、さすがにこんな魚ばかりの十二支は誰からも受け入れられないと思われます。
そもそも種類の多さだけで決めることが動物学的に正しいとも思わないですし、十二支は人間に身近な動物から選ばれた歴史があるので、その点を考慮し出来るだけ最小限の変更に留め、改めて十二支について考えてみたいと思います。
そう考えた場合、まず問題になるのは辰(リュウ/龍)です。
龍は実在しないので、ここは確実に差し替えないといけません。
龍は爬虫類系の動物と考えられるので、代わりになるのは同じ爬虫類のカメやトカゲか、あるいは両生類からも1つぐらい選ばれてもいい気がするのでカエルも候補となりますが、個人的にはカメを推します。
中国では玄武というカメ系の空想動物がおり、龍(青龍)と同様に神獣として扱われているので、龍の代わりにはカメが1番良いと感じるのです。
ということで、生物学的に人から遠い両生類と魚類は十二支からは外させていただきます。m(_ _)m
爬虫類に関しては、多くの人に忌避されるヘビが入っているという点も気になるところです。
しかしヘビは神話などにもよく登場し、その中で比較的好意的に捉えられている傾向もあり東アジアでは結構重要な位置付けの動物なようなので、十二支には欠かせない動物と言えます。
十二支について、もう一つ動物学的な問題を感じる点がウシとヒツジが入っていることです。
実はこの2種はどちらもウシ科の動物で、さすがに同じ科から2種の選出はバランスの悪さを感じます。
どちらを残すかと考えた場合、やはり人間に馴染みのある動物はウシのほうなので、ヒツジが落選となります。
減った分は、哺乳類の採用されていない目に分散することが1番良いかと思います。
とは言え、当然アフリカ大陸やアメリカ大陸、オーストラリア大陸にのみ生息している哺乳類の目は採用出来ないですし、皮翼目(ヒヨケザル)や登木目(ツパイ)も生息域が東南アジアに限定して東アジアでは見ることのない動物です。
長鼻目(ゾウ)は一応中国にも生息していますが、ほとんど見ることはありません。
それ以外で考えられる第一候補は翼手目(コウモリ)です。
コウモリは哺乳類の中で齧歯目(ネズミ目)に次ぐ種類の多さを誇っているので、動物学的に考えればここから1種選ぶのが正しいのでしょうが、いかんせんコウモリはイメージが悪く、縁起物にもなっている十二支に採用するのには気が引けます。
真無盲腸目のモグラも地中で生活するなど決して良いイメージはありません。
残るは鱗甲目のセンザンコウだけなのですが、さすがにマイナーすぎて十二支に採用するのは難しいでしょう。
ということで新しい目から採用するのは諦めて、他の目からの採用を考えます。
種類の多さを考えれば、齧歯目(ネズミ目)からは2種選ばれてもいいような気がします。
ただ、東アジア圏のネズミは総じて小さく一括りにネズミと見なされているので、1種の採用でも十分なはずです。
霊長目(サル目)もサルと一括りされる傾向が極めて強い種類の動物なので、これ以上の採用は非現実的です。
食肉目(ネコ目)は既にトラとイヌが選ばれていますし、鯨偶蹄目は上記したウシ科の2種以外にもイノシシがいるのでこれ以上は増やせません。
このようにヒツジの代わりに哺乳類から十二支を選ぶことは難しそうなので、鳥類から新たに1種を採用することにしました。
そもそも爬虫類が2種で鳥類1種ではバランスが悪すぎます。
東アジアで身近な鳥といえばスズメ、カラス、ツバメ、ハトあたりで、存在感のある鳥ならワシなどの猛禽類や、ツルなどの大きな鳥類が思い浮かびます。
しかしワシやツルは滅多に見ないですし、カラスはイメージが悪くツバメは渡り鳥で常に東アジア圏にいるわけではありません。
そしてハトは行動がかなりウザいです。(^_^;)
スズメは小さくてインパクトに欠けますが、この中なら1番身近で数も多いので第一の選択肢となります。
というわけで十二支は、子・丑・寅・卯・亀・巳・午・雀・申・酉・戌・亥となりました!
十二支の漢字には元々動物の意味はなく、単純に動物を当てはめただけなので、子(ネズミ)・丑(ウシ)・寅(トラ)・卯(ウサギ)・辰(カメ)・巳(ヘビ)・午(ウマ)・未(スズメ)・申(サル)・酉(ニワトリ)・戌(イヌ)・亥(イノシシ)と表するのが正しくなります。
ただ、これだと順番的に申(サル)が鳥類に挟まれていてなんとなく違和感があるので、竜と巳が連続だったことを踏まえ、子(ネズミ)・丑(ウシ)・寅(トラ)・卯(ウサギ)・辰(カメ)・巳(ヘビ)・午(ウマ)・未(サル)・申(スズメ)・酉(ニワトリ)・戌(イヌ)・亥(イノシシ)と順番を微調整したほうが良さそうです。
ウサギの後にカメがくるのも、有名な童話との調和があって良いと思います。
しかし、この順番は動物学的にバラバラな気がしてなりません。
分岐分類学なども考慮し、十二支の最終案は
子(カメ)・丑(ヘビ)・寅(ニワトリ)・卯(スズメ)・辰(ネズミ)・巳(ウサギ)・午(サル)・未(ウマ)・申(イノシシ)・酉(ウシ)・戌(イヌ)・亥(トラ)
に決定です!
日本に限定するのなら、生息していない寅(トラ)の代わりに猫を入れてもいいかもしれません。
暗中模索のまま書き始めた正しい十二支の考察でしたが、我ながら上手くいった気がします。
以上、今年ははスズメ年、来年はネズミ年になりますので、よろしくお願いします。
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